
✅この記事では、Appleの廉価版ヘッドセットと噂されていた「Vision Air」計画が開発停止になった、という報道を整理します。あわせて、Appleがどこまで本気でスマートグラス路線に舵を切ろうとしているのかも見ていきます。
- Vision Airとは?もともとの計画をざっくりおさらい
- 今回の報道:G-VRパネル開発が止まり、Vision Airごと棚上げに
- Bloombergも伝えていた“Vision Airよりスマートグラス優先”路線
- 注目したいポイント:ヘッドセットより「毎日かけるメガネ」が本命?
- ひとこと:安いVisionより“毎日かけるAppleメガネ”を優先?
- まとめ:Vision Air“停止”は、ゴールを変えずにルートを変えた動きかも
どうも、となりです。
Vision Proは「高すぎる・重すぎる」という声がずっと付きまとっていましたよね。その解決策として期待されていたのが、軽くて価格も半分くらいになると言われていた「Vision Air」でした。ただ今回、中国メディアのIT之家などがそのVision Airが“棚上げ状態”に入ったと伝えています。
いきなり「計画中止」と聞くと不安になりますが、背景を整理してみると、Appleが単純に諦めたというより「ヘッドセットより先にメガネ型を形にする」方向へ優先順位を付け直した、という見方が近そうです。
Vision Airとは?もともとの計画をざっくりおさらい
まずは「そもそもVision Airって何だったの?」というところから簡単に振り返っておきます。
- Vision Proの“軽量・低価格版”として構想 アナリストの郭明錤氏によると、Vision Airは重量40%減・価格50%減を目標にしたモデルでした。現在のVision Proはおよそ600g前後と言われているので、Vision Airは360g近辺まで軽くするイメージです。
- 価格は約半分に Vision Proは米国で$3,499(日本では¥599,800〜)と超プレミア価格です。ここから半額近くにする、つまり約$1,700前後(約¥280,000〜300,000)を狙う、といった話が出ていました。
- 発売時期は2027年が有力視 量産は2027年後半という予測が多く、「今のVision Proが“開拓機”、Vision Airが“大衆向けの本命”」という期待が高まっていました。
このあたりの流れは、以前まとめたVision Airとスマートグラスの比較解説ともつながる部分です。今回のニュースは、そのシナリオが一度白紙に戻りつつある、という話なんですよね。
今回の報道:G-VRパネル開発が止まり、Vision Airごと棚上げに
IT之家が韓国メディアDealSiteの報道として伝えた内容を、かんたんに整理すると次のようになります。
- Samsungと共同開発していた「G-VR」ディスプレイ AppleはSamsungと一緒に、ガラス基板の上にmicro-OLEDを載せる「G-VR」と呼ばれるディスプレイを開発していたとされています。いまのVision Proが採用する“シリコン基板のmicro-OLED”より、コストを大きく下げられるのがポイントでした。
- 低コストVision Airのキーパーツだった このG-VRパネルは、まさにVision Airのコストダウンの切り札と目されていました。高価なディスプレイを安くできれば、本体価格もぐっと下げやすくなります。
- AppleがSamsungに「いったんストップ」を要請か DealSiteの報道によると、Appleは最近、このG-VRプロジェクトの継続を中止するようSamsung側に伝えた可能性が高いとのこと。結果として、Vision Air自体の計画も「いったん棚上げ」になっているとされています。
別メディアのWccftechやRoad to VRなども、同じく「低価格版Vision Air計画が行き詰まり、Appleが一歩引いた状態になっている」と補足しています。ここだけ切り取るとネガティブですが、次の動きを見ると「別ルートにリソースを振り直している」と読むほうがしっくりきます。
Bloombergも伝えていた“Vision Airよりスマートグラス優先”路線
今回の話を理解するうえで無視できないのが、10月にBloombergが報じたヘッドセット開発の「一時停止」です。そこでは、コードネームN100と呼ばれる廉価版ヘッドセット(=Vision Air候補)の開発を止めて、スマートグラスに人員を振り向ける、という内容が伝えられていました。
この流れについては、すでに詳しく解説したVision Pro開発一時停止とスマートグラス計画のまとめとも整合します。今回のIT之家の続報は、「ディスプレイ側のプロジェクトも含めて、本当にVision Airの路線はいったん止まっているらしい」と裏付ける形になりました。
BloombergやReutersの報道を合わせて読むと、Appleは次のような優先順位に組み替えたように見えます。
- 既存のVision ProはM5チップ版などで“延命”しながらアップデート
- まったく新しい筐体のヘッドセット(Vision Air/Vision Pro 2)は一時停止
- その分のリソースを、メガネ型の「Apple Glasses」系プロジェクトにシフト
すでに複数の報道で、Appleはディスプレイなしのスマートグラス(通知・音声アシスタント中心)を先に出し、その後2027年ごろにAR表示も備えた第二世代モデルを計画しているとされています。このあたりは、Apple Glassesのロードマップを整理したApple Glassesローンチ戦略まとめと同じ方向性です。
注目したいポイント:ヘッドセットより「毎日かけるメガネ」が本命?
では、このVision Air棚上げのニュースをどう受け止めるか。個人的にポイントだと思うところを挙げてみます。
- ヘッドセットは「体験のショーケース」、メガネが「日常の入り口」 Vision Proは体験としてはすばらしいけれど、価格と装着感のハードルが高いです。Apple自身も「毎日かけてもらうデバイスは、より軽くて自然なメガネ型のほうだ」と判断しつつあるように見えます。
- G-VRのような技術は“別の形で再登場”する可能性 今回止まったのは、あくまで「Vision Air向けのガラス基板micro-OLEDプロジェクト」とされています。コストダウン技術そのものは、将来のVision Pro 2や別のメガネ型デバイスに転用される可能性も十分あります。
- Appleにとっても“無理な値下げ競争”は避けたい MetaのQuestシリーズなど、すでに安価なヘッドセット市場は競争が激しい状況です。Appleが同じ土俵で値段勝負に行くより、スマートグラスというまだ空白が多い領域に先に踏み出したほうが、ブランド戦略として自然とも言えます。
こうして見ると、Vision Airの棚上げは短期的には残念でも、長期目線では「ヘッドセットとメガネ、二本立てで最終ゴールに近づくための調整」の一環と捉えることもできそうです。
ひとこと:安いVisionより“毎日かけるAppleメガネ”を優先?
Vision Airが実現していれば、「Appleの空間コンピューティングを試してみたいけど、さすがにVision Proは高すぎる」という層にとって、魅力的な選択肢になったのは間違いありません。なので、今回のニュースを残念に感じる人が多いのもよくわかります。
一方で、Appleが本気で狙っているのが「生活に溶け込むメガネ型デバイス」だとすると、限られたリソースをそちらに集中させる判断にも一定の筋は通っています。安いヘッドセットを急いで出すより、「毎日かけても違和感のないAppleメガネ」を先に完成させる──そう考えると、今回の棚上げも長いストーリーの中の一コマとして見えてきます。
まとめ:Vision Air“停止”は、ゴールを変えずにルートを変えた動きかも
最後に、今回の内容をもう一度まとめておきます。
- IT之家などによると、AppleとSamsungが開発していたガラス基板micro-OLED「G-VR」プロジェクトが停止し、廉価版ヘッドセットVision Air計画も棚上げになっている模様。
- Vision Airは重量40%減・価格50%減を目標としたVision Proの軽量・低価格版で、2027年ごろの登場が期待されていた。
- Bloombergらの報道では、Appleは廉価版ヘッドセットの開発を一時停止し、その分のリソースをスマートグラス(Apple Glasses)に振り向けているとされる。
- 短期的には「安いVisionが遠のいた」ように見えるが、長期的には“毎日かけるメガネ型デバイス”を本命に据えた路線調整と見ることもできる。
- G-VRのような低コストディスプレイ技術は、将来のVision Pro 2やメガネ型デバイスに形を変えて戻ってくる可能性もある。
空間コンピューティングの世界は、どうしても「今ある製品」だけを見て語りがちですが、Appleはかなり長いスパンで「最終的にメガネのようなデバイスに収れんさせる」道筋を描いているように感じます。Vision Airのニュースは、その途中でルートを微調整したサインなのかもしれません。あなたは、ヘッドセット路線とメガネ路線のどちらに期待しますか?
ではまた!
Source: IT之家, DealSite, Wccftech, Bloomberg, Reuters, Road to VR
※換算は $1=¥160 前後を想定した概算です。
