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ティム・クックはどうAppleを変えたのか──COO就任から20年の軌跡

クック氏(左)はスティーブ・ジョブズ氏(右)と一緒に働くためにアップルに入社した

✅この記事では、AppleInsiderの記事をもとに、ティム・クックがCOO(最高執行責任者)に就いた2005年から今日までの流れを整理します。単なる社史ではなく、「Appleはなぜ世界規模で“止まらない会社”になったのか」を、オペレーション(調達・製造・物流)の視点で一緒に見ていきましょう。

 

どうも、となりです。

CEOにはスポットライトが当たりやすいですよね。でもAppleの場合、COOの仕事こそが後の変化を大きく押し出しました。2005年10月14日、ティム・クックが正式にCOOに就任。そこから先の20年で、Appleは「作る」だけでなく「届け切る」会社へと形を変えていきます。

COO就任は“肩書の新設”ではなく、“実態の公式化”

面白いのは、クックのCOO就任が「ゼロからの新設」ではなかったことです。スティーブ・ジョブズいわく、「ティムはこの仕事を2年以上前から実質的にやっていた」。つまり、社内ではすでにクックが“世界のサプライチェーンを回す人”になっていたわけです。COOの肩書は、実態に追いついた認定だったんですね。

“分析”で来たはずが、“直感”でAppleへ──1998年の決断

クックの経歴はとてもロジカルです。デューク大学でMBA、IBMでパイプライン管理、Intelligent ElectronicsやCompaqでJIT(必要なときに必要な分だけ)やBTO(注文に応じて組み立て)を磨く。数字で語れるキャリアですよね。

それでも1998年3月11日、彼はAppleに入社します。本人は「合理的に考えればCompaqに残るべきだった」と振り返りつつ、「直感がAppleだと告げた」と語る。ここは少し人間くさくて好きな場面です。

 

 

“当てる”だけじゃ足りない──iMacを「届かせる」ための1億ドル

クックの仕事は、製品がヒットするかどうかを見極めることではありません。ヒット作を「間に合わせて」「途切れさせずに」世界へ運び切ることです。就任まもない時期、彼は1億ドル分の航空貨物スペースを前倒しで確保します。iMacをホリデーシーズンに確実に届けるために。

賭けにも見える判断ですが、結果はご存じの通り。しかも自社が運べるだけでなく、同時にライバルの輸送余地を圧迫する副次効果も生まれました。ここにクック流の「短期」と「長期」を両利きで回す視点がにじみます。

サプライチェーンを“地図ごと描き直す”──2015年からの再配置

世界情勢は静かに、そして不規則に変わります。AppleInsiderは、2015年ごろからクックが供給・流通網を組み替え始めていたと指摘します。結果として、関税や規制が激しく揺れた局面でも、影響を最小化。とはいえコストはゼロにはならない。iPhone 17の頃までに関税関連で約20億ドルの追加負担が発生した、と記事は述べています。

それでも出荷は止めない。ここがAppleの強さで、クックの仕事の「地味だけど大切」なところなんですよね。

数字は“結果”であって“目的”ではない──1兆、そして3兆へ

2011年、クックはCEOに。そこからAppleは時価総額1兆ドルを初達成し、さらに3兆ドルという史上初の水準にも届きます。クック本人は、「財務リターンはイノベーションと顧客価値の結果」と語ります。売上や利益を追うというより、オペレーションで「約束通りに届ける」ことが積み上がった帰結、と読むのが自然です。

 

 

“プロダクトの人ではない”は本当か

ジョブズは後年、クックについて「プロダクトの人ではない」とこぼしたと言われます。でも考えてみると、Appleに必要だったのは「プロダクトを成立させる背骨」でもあります。iMacもiPhoneも、サプライ網が呼吸するように動かなければ“良い製品”で終わってしまう。クックの関心は、丁寧に言えば「ユーザーに届くまでを設計すること」。これはAppleにとってもうひとつの“製品”でした。

政治や倫理との距離感──“正しいビジネス”が“正しい選択”とは限らない

クック時代のAppleは、政治との距離が近づいたとも言われます。関税や規制の荒波の中で、事業を守る判断が「道徳的にどうか」と問われることもある。AppleInsiderもそこに触れています。ここは読み手によって評価が割れる点ですが、少なくともクックは「止めないこと」を最優先の価値としてきた、と言えるのかもしれません。

次の世代へ──“計画する人”は、引き継ぎも計画する

クックはもうすぐ65歳。ジョブズより長くトップを務めています。彼の周囲の幹部も同世代で、いつかはバトンが渡される。誰が次かは公表されていませんが、「計画で会社を前に進めてきた人」が、引き継ぎだけ無計画ということはないでしょう。次のCOO像がどうなるか、ここは注目ポイントですね。

 

 

redditの反応──「オペレーター」か「革新の終焉」か

  • クックの2005年COO就任が、Appleの“現代の始まり”だという声が多い。サプライチェーンを最適化し、iPhone時代の基盤を作ったという評価。
  • 一方で「Tim started cooking 20 years ago. Now he’s cooked.(もう“焼きが回った”)」といった皮肉も散見され、そろそろ世代交代すべきという意見も目立つ。
  • 「AI時代には“製品を生み出す人”をトップにすべき」「次はエンジニア出身のTernusが後継では?」といった次期CEO予想も盛り上がっている。
  • 政治的スタンスへの批判も根強く、「トランプに屈した」「ブランドを汚した」という意見と、「関税を回避するための戦略的判断」という擁護が激しく対立。
  • 「イノベーションを失った」との批判に対し、「Apple Watch・AirPods・Apple Siliconを見れば十分だ」と反論する声も多く、議論は白熱。
  • 「ティムはスティーブの夢を現実にした」「彼はオペレーションの天才だ」という声もあり、功績をたたえるコメントも根強い。

全体的には、クックの功績を認めつつも“次の時代”を求める空気が漂う。20年前に「作る前に届ける」を変えた男に、次は「誰が引き継ぐのか」が注目されています。

まとめ

今回の動きをひとことで言うと、ティム・クックは“作る”前に“届ける”を設計し直し、その安定を20年かけて拡張した、という話です。Appleが世界でもっとも“外乱に強い”会社になった背景には、派手さはないけれど、確かなオペレーションの哲学があるんですよね。

ではまた!

 

 

Source: AppleInsider