✅ この記事では、Apple Vision Proに搭載が見込まれる次世代「R2チップ」と、TSMCの2nmプロセス採用の動きについて整理します。さらに、iPhoneやMacに広がる2nm世代の展望についても触れ、日本ユーザーにとっての影響をわかりやすく解説します。
どうも、となりです。
Appleが開発する半導体は、これまでiPhoneやMacの競争力を支える柱でした。しかし今回は少し毛色が違います。高額かつニッチとされるApple Vision Proに、TSMCの最先端2nmプロセスを使った「R2チップ」が投入されるというサプライチェーン情報が出ています。これまでの「大衆向け製品で最先端を披露する」流れとは異なり、ヘッドセットという特殊なデバイスが次世代シリコンのデモンストレーション役になるという話です。
R2チップと2nmプロセスの位置づけ
事実として、TSMCは2025年後半から2nm量産を開始し、2026年には月10万枚規模のウエハ生産を見込んでいます。このプロセスはゲート・オール・アラウンド(GAA)トランジスタを採用し、3nm比で約15%の性能向上、もしくは30%の省電力化が可能とされています。Appleはこのラインの供給を相当量確保したと報じられており、R2チップはその恩恵を最初に受ける製品群の一つになる見込みです。
考察すると、AppleがVision ProにR2を投入するのは、単に性能向上を狙うのではなく「省電力性能」が鍵だからでしょう。ヘッドセットは高解像度ディスプレイと常時稼働のセンサー群を抱えており、熱やバッテリー持ちに直結する効率性こそがユーザー体験を左右します。
Appleの半導体戦略の延長線
Appleは過去、Aシリーズでスマホ性能を引き上げ、MシリーズでMacをIntel依存から脱却させました。今回のR2もその延長線上にあり、「自社設計のシリコンを戦略武器にする」という方針をさらに拡張する試みといえます。
2019年にはIntelのモデム部門を買収してQualcomm依存を減らした実績もあります。
同じようにR2を社内で設計することで、Vision Proの特殊な要件(リアルタイム描画・熱設計・低遅延処理)を汎用チップに頼らずコントロールできるようにしていると考えられます。
リスクとコスト構造
ただし、2nmという超先端ノードにはリスクも伴います。歩留まり(製造成功率)が低い時期には多くの不良品が出るため、1枚3万ドルともいわれるウエハコストが膨らみます。iPhoneのように大量販売でコスト吸収できる製品と違い、Vision Proは1台3,000ドル以上という高額機種。失敗チップの負担をどう処理するかが課題になります。
サプライチェーンのアナリストは「初期段階では収益率が低く、Appleのマージンを圧迫する」と指摘しています。
Appleは短期的な利益より「最先端の象徴」としてVision Proを活用し、エコシステム全体のシナリオ(iPhoneやMacへの2nm展開)を優先している可能性が高いです。
iPhone・Macへの波及
報道では、iPhone 18 ProにはA20チップが搭載され、これも2nmプロセスで製造される見込みです。大量に出荷されるiPhoneは、Appleが2nmを「本格展開」する最初の舞台になります。
一方MacはM5チップで先行的に2nm採用が始まり、その後登場するM6で全面刷新が行われるといわれています。Vision ProでのR2が「ショーケース」、iPhone 18のA20が「量産本番」、MacのM5/M6が「完成形」という流れです。詳しくは「Appleの2nm時代の展望」でも整理されています。
日本向けの注意点
日本での販売仕様はグローバル版と基本的に同じで、R2チップ搭載が実現すれば性能差はありません。ただし国内市場での注意点は価格設定です。為替や関税の影響で、米国価格3,499ドルのVision Proが日本では50万円前後に設定された実績があります。2nm世代でのコスト上昇が直撃すると、さらに価格が上振れする可能性がある点は押さえておくべきでしょう。
また、Vision Pro特有の機能である「デジタルプリズム補正」のような仕組みも、日本市場で同様に提供される見込みです。ハードウェア依存ではなくソフトウェア補正で対応できる点は、グローバルで共通仕様となりやすい領域と考えられます。
まとめ
AppleがVision Proに2nm世代のR2チップを載せる計画は、「ニッチ製品を実験場にする」という大胆な戦略の表れです。効率性と熱設計で混合現実体験を支える狙いがありますが、製造リスクや価格上昇という課題も同時に抱えています。最終的にiPhoneやMacへ展開される流れを考えると、R2は単なる新チップではなく、Appleの半導体戦略そのものを象徴する存在といえるでしょう。
ではまた!