t0nAr1sm

Appleをもっと身近に、もっと深く。

Appleは来年早々に1兆個のパラメータを持つ自社開発のApple Intelligenceを発表する予定

Apple Intelligenceのカラフルなアイコン。中心に白い線で描かれた抽象的な星型シンボルがあり、背景はオレンジからブルー、ピンクへと滑らかにグラデーションしている

✅この記事では、「Appleが最短で来年にも“1兆パラメータ”の自社製Apple Intelligenceモデルを投入する」という報道を整理します。情報源はBloombergのPower Onで、現状はGoogleのGemini(約1.2兆パラメータ)を一部併用しつつ、将来的に自社モデルへ切り替える方針が示唆されています。

どうも、となりです。

いまのApple Intelligenceは、クラウド側の一部でGeminiを後方支援として使う設計とされています。社内ではこの外部モデルを「AFM v10」と呼んで区別している、という指摘もありました。とはいえ、最終目標は自社完結の大規模モデルへの移行。今日はその“道筋”を数字と時間軸で見ていきます。

要点まとめ

  • 来年にも自社製の“1兆パラメータ級”モデルを投入(消費者向けに段階展開)。
  • 当面はGemini併用を継続し、Siriの春アップデートには新モデルは間に合わない見込み。
  • 社内通称「AFM v10」で外部モデルの使用を管理し、自社基盤との一体運用を図る。
  • 外部モデルの利用対価は年間$10億(約¥1,570億)規模と報じられる。
  • 長期的にはGemini依存を縮小し、Apple独自モデルを主軸へ。

補足解説:1兆パラメータとは何か?

「1兆パラメータ」と聞くと桁外れの数字ですが、これはAIの“頭の中の配線の多さ”を表す単位です。
パラメータとは、AIが学習の中で覚えていく「重み付け」のことで、人間でいえばシナプス(神経のつながり)のようなものなんです。

たとえば、今のApple Intelligence(約1,500億パラメータ)を“高校生レベルの知識量”とするなら、1兆パラメータは“社会人全般の専門知識をも含んだ総合知”に近い規模。単純に大きいだけでなく、文脈理解・創造性・判断の一貫性が格段に向上します。

もう少しイメージしやすく言うと、Apple Intelligenceの1兆パラメータは人間10万人分の「経験の断片」を統合した頭脳のようなものです。たとえばSiriが質問に答えるとき、「音声認識→意味理解→感情トーン→実行指示」という複雑な流れの中で、それぞれの判断をこの“1兆の配線”が支えます。

つまり、Appleが目指しているのは「どんな質問にも即答できるAI」ではなく、“人のように状況を理解して動くAI”なんですよね。そのためには、単に大規模なデータではなく、正確に構造化された知識のネットワークが必要で、1兆パラメータはその“質と深さ”の象徴でもあります。

そして、これをすべて自社で構築するというのが今回の挑戦。GoogleやOpenAIのような外部モデルではなく、Appleの哲学──「プライバシーを守りながらスマートに動くAI」を実現するには、自前の脳を持つことが欠かせないというわけです。

背景:なぜ“外部併用→自社本格化”なのか

Appleはユーザー体験の安定を最優先に、まずは完成度の高い外部LLMを安全に取り込むアプローチを採用しています。

これは、過去にモデムでQualcommへ切り替えて5G対応を加速した事例と文脈が近い発想です。短期の利便と長期の自立、その両立を狙うわけです。

Gemini連携の全体像は、以前まとめた「Siri×Geminiの整理記事」が俯瞰しやすいですよ。

技術の射程:1兆パラメータへ

現行のクラウド側Apple Intelligenceは約1,500億パラメータ級とされます。ここから一気に桁を繰り上げるには、推論コスト、人手・データ、そしてサーバ基盤が鍵です。Appleは米国内の専用AIサーバ群(PCC:Private Cloud Compute)も合わせて整備を進めており、その狙いは「PCCの“内製×透明性”設計」に色濃く表れています。

 

 

運用の現実:Siriの春アップデートには間に合わない

Bloombergは、来春のSiri大型アップデートには新・自社1兆モデルは未導入になる見通しとしています。つまり、短期は外部モデルの後押し+既存の自社モデル改良で強化を進め、中期で一気に独自化を深める二段ロケット型の計画というわけです。

春のSiri刷新ロードマップは、以前まとめたSiri強化の解説も参考になるはずです。

ネーミングと“AFM v10”という扱い

社内で外部モデルを「AFM v10」と呼び、自社のApple Foundation Models(AFM)体系の一部として運用している、とされます。要するに、外部の“知恵”を自社の土台に整然と組み込むための“型”づくりです。

Apple Intelligenceの全体像や対応レンジは、基礎をひと通り押さえた入門ガイドで整理しています。

注目したいポイント

  1. 短期の完成度と長期の独立性:まずは外部モデルで体験を底上げし、信頼できる品質を担保。中期で独自モデルへ軸足を移す設計です。
  2. コストと主権:年間$10億規模の外部依存は重い。だからこそ、自社モデル化は“コスト最適化+製品主権”の投資でもあります。
  3. サーバとソフトの二正面:1兆級はモデルだけの話ではありません。PCCのようなインフラ刷新があってこそ実用に乗ります。
  4. 人材の流出と獲得:大規模モデル運用は人の勝負。外部協業で時間を買いつつ、採用と組織の立て直しが並走課題になりそうです。
  5. 段階展開の見取り図:来春は“現行+外部の磨き込み”。来年後半〜再来年にかけて“自社1兆級の本格活用”が現実的なラインでしょう。

ひとこと:賢さより“確実さ”が信頼を生む

どれだけ巨大なモデルでも、日々のSiriが“当たり前に動く”感覚がなければ、読者の心には根づきません。

Appleは短期の外部協業で体験を整えつつ、裏側では自社モデルとPCCを固める二層構造で進めています。

派手さより、静かな安定の積み上げ。その先に、Apple流のAIがふつうに馴染む未来が見えてくるというわけです。

ではまた!

 

 

Source: IT之家, Bloomberg