
✅この記事では、Apple Watch Series 11/Apple Watch Ultra 3に導入された3Dプリント製造と、iPhone AirのUSB-Cポートにまで広がったチタン活用の話を整理します。Appleが「素材」と「作り方」からプロダクトをどう変えているのかを、一緒に見ていきましょう。
- Apple Watch 11/Ultra 3は「再生チタン×3Dプリント」世代
- 従来の削り出しから、3Dプリントによる「積み上げ」へ
- 防水性アップとアンテナ周りの構造改善
- Apple 2030目標と、再生チタンの「スケール感」
- iPhone Airの超薄型USB-Cポートも3Dプリントの産物
- 注目したいポイント:製品ではなく「工場のアップデート」
- Redditの反応まとめ
- ひとこと:見た目が変わらないアップデートほど、じつは大きい
- まとめ:3Dプリントは、Apple製品の「第2の裏側」になっていく
どうも、となりです。
Apple Watch Series 11とApple Watch Ultra 3は、単なるマイナーチェンジではなく、製造プロセスそのものをひっくり返した世代でもあります。見た目は従来のApple Watchの延長に見えるのに、その裏側では再生チタン粉末×3Dプリントがフル活用されている、というのが今回のポイントなんです。
しかも、この3DプリントのノウハウはApple Watchだけで終わらず、超薄型のiPhone AirのUSB-Cポート構造にも応用されています。つまり「ケースの作り方を変えたら、iPhoneの薄さまで変わった」という話でもあるわけですね。
Apple Watch 11/Ultra 3は「再生チタン×3Dプリント」世代
元記事となるAppleのプレスリリースと9to5Macによる解説によると、Apple Watch Series 11とApple Watch Ultra 3のチタンケースは、いずれも3Dプリントで成形されています。材料は100%再生の航空宇宙グレード・チタン粉末。大量生産でここまで再生素材を使い切るのは、「これまで不可能に近い」と考えられていたところからの大きな前進です。
Series 11ではステンレスモデルのような鏡面仕上げを保ち、Ultra 3では高い耐久性と軽さを維持。見た目も耐久性も変えずに、素材と工法だけ大幅に入れ替えるという、かなり難しい挑戦でした。
従来の削り出しから、3Dプリントによる「積み上げ」へ
Appleが今回強調しているのは、「削るものづくり」→「積み上げるものづくり」への転換です。従来はチタンの塊を鍛造し、そこから大きく削り出す方式でしたが、3Dプリントでは必要形状に限りなく近い形で積層してから仕上げます。
この結果、Series 11とUltra 3では、原料チタンの使用量が前世代比で“半分”に。Appleによると、2025年だけで400トン以上の原料チタンを節約できたとのこと。まさに「同じ材料から2本作れる」レベルの変化です。
3Dプリントの量産精度をここまで引き上げるには、印刷後の熱処理や仕上げ、検査ラインまですべて再設計する必要があります。つまり製造ライン全体を作り替える規模の変革だったといえます。
防水性アップとアンテナ周りの構造改善
3Dプリントの恩恵は材料節約だけではありません。今回のモデルでは防水性、とくにセルラーモデルのアンテナ周りの密閉性が向上したと説明されています。
水の侵入経路になりやすい部分を避けた一体成形の自由度が上がったことで、シール構造の余裕が増えたイメージです。内部空間を無駄なく使えるようになったことで、アンテナの通り方やパッキンも見直しやすくなったのだと思います。
Apple 2030目標と、再生チタンの「スケール感」
Appleが3Dプリントを推し進めている理由のひとつは、「Apple 2030」=2030年までに完全カーボンニュートラルという大きな目標に直結しているからです。再生チタン粉末100%、原料半減は、CO₂削減にそのまま効いてきます。
少量生産では当たり前の再生素材でも、Apple Watch規模のマス市場製品で100%採用というのは、やはりAppleならではの押しの強さを感じます。
iPhone Airの超薄型USB-Cポートも3Dプリントの産物
個人的に最も興味深かったのは、この技術がiPhone Airに波及していると明記されていたことです。5.6mmの薄さにUSB-Cポートを収めるには、従来以上に薄く・強く仕上げる必要がありました。
そこでAppleは、Apple Watchと同じ再生チタン粉末を使ってUSB-Cポート用のハウジングを3Dプリント。複雑な肉抜きや補強リブを一体成形し、「薄さ」と「耐久性」を両立したと説明しています。
注目したいポイント:製品ではなく「工場のアップデート」
ここまで見ると、Series 11/Ultra 3やiPhone Airは、「新製品」ではなく「新しい工場が生み出した成果物」と捉えるほうが自然かもしれません。3Dプリントを量産に導入するには、材料管理からプリンタ設備、歩留まりまで、サプライチェーン全体の調整が必要だからです。
多くの人は新製品を見るときにスペックを重視しますが、製造プロセスの変化は“数年後の製品全体”に影響するタイプの変化なんですよね。
長期的には再生素材前提のラインが増えることで業界全体の素材循環が進む可能性もあります。一方、3Dプリントはコストや速度の課題もあり、今後の設備投資や歩留まり改善も注視したいところです。
Redditの反応まとめ
- Apple Watch Series 11のチタニウムケースが3Dプリント製だと知って驚いたという声があり、「こんな作り方をしているとは思わなかった」と感心するコメントが見られる。
- Appleが掲げる「Apple 2030」カーボンニュートラル目標について、環境報告書では2015年の3,840万トン → 2024年の1,530万トンへと大きく排出量を減らしているという指摘がある。
- 一方で、カーボンオフセットが排出量の0.4%(約7万300トン)しかカバーしていないのは「グリーンウォッシングではないか」という強い批判もあり、「FacebookやSamsungが同じ数字でも許されるのか」と疑問視する意見も出ている。
- これに対して、「完璧を善の敵にするな」というスタンスで、まずは実排出を大きく削減している点を評価すべきだという擁護側のコメントも多く、「数字をちゃんと読むべき」と反論している。
- オフセットについては、「本来は最後の数%だけに使うべきで、まずは排出削減が最優先」「削減の方がオフセットより重要」という考えに、多くの参加者が概ね同意している雰囲気がある。
- Appleのインフォグラフィックや「材料効率50%向上」といった表現に対して、「切削くずがリサイクルされる前提を無視して数字を盛っていないか」「インフォグラフが分かりづらい」と、数字の見せ方そのものに疑問を投げかける声もある。
- 3Dプリント技術そのものについては、「SLSなら粉末を再利用できる」「中空構造で従来では不可能な軽量な形状が作れる」など、材料ロス削減や軽量化の観点でポジティブに評価するコメントも見られる。
- 一方で、「メガテック企業をブランドイメージだけで免罪してはいけない」「マーケティングと“コアバリュー”で暖かい気持ちにさせられているだけでは」といった、大企業全般への懐疑的な視点も根強く、議論がややヒートアップしている場面もある。
総じて、Appleの排出削減自体は一定の評価を得ているものの、オフセット依存の度合いや数字の見せ方をめぐって、環境配慮として十分かどうかについては海外でも賛否がはっきり分かれている印象です。
ひとこと:見た目が変わらないアップデートほど、じつは大きい
Series 11やUltra 3を初めて見たとき、「あまり変わらないな」と感じた方も多いと思います。でも、今回の話を踏まえると、“変わらないように見せるための努力”が相当な規模で積み上がっていることが分かります。
素材も作り方も工場も変わっているのに、ちゃんと“いつものApple Watch”に見える。このバランス感覚こそ、Appleらしさのひとつだと思います。
まとめ:3Dプリントは、Apple製品の「第2の裏側」になっていく
今回は、Series 11/Ultra 3の3Dプリント×再生チタン粉末の採用や、それがiPhone AirのUSB-Cポートにも応用されている話を整理しました。
スペック表では見えない「作り方」というレイヤーが、今後はガジェット選びでもじわじわと存在感を増していきそうです。3Dプリントがどこまで広がるのか、これからも注目ですね。
ではまた!
Source: Apple Newsroom, 9to5Mac

