
✅この記事では、海外要人の車列にいる「アンテナだらけの車」について整理します。Bluetoothが切れたり、スマホが一瞬圏外になるのはなぜか。今回は日本国内での運用を前提に、電波法との関係もやさしく噛み砕きます。
- 要点まとめ(日本での来日車列の前提)
- 電子妨害車の正体:日本で“何をどう抑える”のか
- なぜ日本で可能なの? 電波法と運用の整理
- 「Bluetoothが切れた/中継が乱れた」はあり得る?
- 技術と運用の現在地:全部止める時代ではない
- 日本向けの注意点:生活影響をどう抑える?
- 安全と利便、どこで折り合う?
- まとめ:電波の「傘」を必要な瞬間だけ
どうも、となりです。
今回の来日では、「車列が通過した瞬間にイヤホンが切れた」という投稿がSNSで話題になっています。
トランプさんが乗ったビーストの後ろに居たこのアンテナまみれの車が目の前通過した途端にイヤホンのBluetoothが強制切断されてスマホも一瞬圏外になってヒェッってなった pic.twitter.com/Lz5DafKA0O
— Nana (@kintorebaka7) October 27, 2025
結論を先に言うと、これは電子妨害(ECM:Electronic Countermeasures)に関わる車両が日本の所管当局と調整のうえ、必要最小限・一時的に運用された可能性が高い、というわけです。実際、バイデン大統領来日時にも同様の通信監視車が確認されています。
要点まとめ(日本での来日車列の前提)
- 米国では通称「Watchtower」と呼ばれる電子対抗車が知られていますが、日本国内での運用は日本側(警察庁・総務省 等)と事前調整が前提です。
- 方式は主に二つ。①選択的ジャミング(特定帯域に短時間ノイズ) ②管理型アクセス(疑似基地局で一時的に通信を抑制)。いずれも局所・短時間が基本です。
- Bluetooth切断や一時的な圏外表示は、ごく近距離での干渉やセルラーの再選択挙動で起こり得ます。恒常的・広域の停止を狙うものではありません。
- 電波法上、無許可の妨害は原則禁止。来日警護では臨時免許や緊急対処の枠組みを用い、範囲・時間・出力を最小化して実施されます。
電子妨害車の正体:日本で“何をどう抑える”のか
日本での来日警護では、米側機材(電子対抗/通信ノード)と日本側の通信指令車・電波監視車が連携します。見た目の特徴は多数のアンテナ。役割は、遠隔起爆や無人機の制御に使われ得る電波を一時的に抑えることです。
① 選択的ジャミング(Reactive / Smart Jamming)
- 携帯起爆・簡易無線・Wi-Fi/Bluetoothなど、脅威帯域のみに短時間ノイズを入れて制御します。
- 常時全開ではなく、検出信号に反応して必要な瞬間だけ出力。至近距離を通る間だけイヤホンが切断されるケースが説明できます。
② 疑似基地局・管理型制御(Managed Access)
- 海外の警護技術の一例として、優先度の高い臨時セルを提示し、端末の通信を一時停止・再選択させる方式があります。
- 無差別停止ではなく、エリアや時間を絞ることで生活影響を抑える設計です。
なお、米国の車列には通信中継車(通称「Roadrunner」)が含まれますが、日本では警察庁の通信指令車が同様の通信支援を担う形です。要人の車列が電波的に切れないよう支える裏方なんですね。
なぜ日本で可能なの? 電波法と運用の整理
日本の電波法は、無免許送信や妨害を原則禁止しています。来日警護では次の整理で適法に実施します。
- 事前調整:警護計画段階で周波数・出力・時間・経路を所管当局と合意。
- ライセンス管理:通信中継は臨時免許、妨害系は緊急対処の枠組み等で条件を厳格化。
- 監視・最小化:電波監視車が常時測定し、不要時は送信しない/必要時も最小限にとどめます。
つまり、勝手に電波を止めているわけではないということ。日本の法秩序の傘の下で、限定的に実施されます。
「Bluetoothが切れた/中継が乱れた」はあり得る?
十分あり得ます。理由は三つです。
- 近接の物理干渉:短時間パルスや広帯域ノイズで、2.4GHz帯(Bluetooth/Wi-Fi)のS/N比が一時悪化。
- セルラー再選択:臨時セルへの吸着→一時停止→再接続で、端末表示が「圏外」や切断に見える。
- 放送・中継機材:無線マイクやIFBが警護帯域と重なると短時間の不調が起こり得ます。
技術と運用の現在地:全部止める時代ではない
現在は選択・局所・短時間がキーワード。移動速度や建物反射も踏まえ、出力とタイミングを細かく制御します。近年はドローン対策(C-UAS)も一体化。測位妨害(GNSS干渉)や指向性バリアなど、ピンポイント抑制へ進化しています。
日本向けの注意点:生活影響をどう抑える?
- 時間・範囲の最小化:通過数十秒〜数分、半径数十〜数百m程度に限定。
- インフラ連携:警察・消防・病院・鉄道など業務無線はホワイトリストで保護。
- 苦情対応:決済・配車・配信の一時不調に備え、所管窓口が事後説明を用意。
安全と利便、どこで折り合う?
通話や音楽が一瞬でも途切れると不便です。ただ、要人警護では「万に一つ」を潰す最後のレイヤーが要ります。私は、限定的で透明性のある運用が守られるなら、社会全体の安全として受け止める価値があると考えます。一方で、説明責任と検証は欠かせません。
まとめ:電波の「傘」を必要な瞬間だけ
まとめ:電子対抗車は、遠隔起爆や無人機の制御を短時間・局所的に抑える最後の盾です。日本では電波法の枠内で、所管当局と調整した限定運用が大前提。現代のECMは選択的・局所的・短時間で、生活への影響は最小化の方向です。要人が通るわずかな時間だけ、電波の傘をそっと広げる──それが今の落としどころなのかもしれません。
ではまた!