
✅この記事では、AppleがiPhoneとMacBookで中国CXMT製メモリをテストしているという報道と、日本で売られる機種に入る可能性について整理します。
- 要点まとめ:iPhoneとMacBookで中国製メモリを試すという報道の中身
- iPhoneとMacBookの名前が、はじめて出た
- 「中国で売る分だけ」は、どこまで持つのか
- 縛られているのは、買うことではなく話すこと
- 【追記】米商務長官が、Appleへ反対を直接伝えた
- 4社目になるには、安いか多いかが要る
- 海外の反応:中国向けに限るという線引きをどう見ているか
- ひとこと:値段の話だと思って読んでいたら、話していい範囲の話だった
- まとめ:8月21日に出るのは、値段の答えではない
どうも、となりです。
CXMT(長鑫存儲技術)という中国のメモリメーカーの名前が、このブログに出てくるのは今回が初めてではありません。政権に許可を求めた、テストを始めた、値下げを断られた。話は毎回少しずつ前へ進むのに、いちばん知りたいところ——自分が次に買うiPhoneやMacに何が入るのか——だけが、ずっと空欄のまま残っていました。
そこへウォール・ストリート・ジャーナルの報道が出ました。AppleがCXMT製のメモリを、iPhoneやMacBookを含む製品ラインでテストしている。テストしていること自体は先月から伝えられていましたが、どの製品で、というところまで出たのは今回がはじめてです。
期限もひとつ切られています。8月21日。
要点まとめ:iPhoneとMacBookで中国製メモリを試すという報道の中身
- ウォール・ストリート・ジャーナルによると、AppleはCXMT製のメモリを、iPhoneやMacBookを含む製品ラインでテストしています。フィナンシャル・タイムズが先月伝えたDRAMの認定作業から、対象の製品カテゴリが具体的に出たのは今回が最初です
- 米国の規則は、米企業がCXMTへ技術を移転することを禁じています。ここには技術的な詳細や製品仕様についての会話も含まれます
- 輸出規制に詳しい弁護士のケビン・ウルフ(Kevin Wolf)氏は同紙に、Appleは既製品のCXMT部品を買って値段を交渉することはできるが、自社の要件に合わせて設計させたチップは発注できない、と述べています
- CXMTは今年の生産枠をすでに使い切っており、ByteDance・Tencent・Xiaomiといった中国国内の顧客を優先しています。価格もMicron・SK Hynix・Samsungと同等か、場合によってはそれ以上と伝えられています
- チャック・シューマー(Chuck Schumer)氏を筆頭とする超党派の上院議員7人は、CXMT製メモリを一切使わないと約束するようAppleへ求めており、回答期限は8月21日です
- 8月15日(日本時間)には、米商務長官のハワード・ラトニック(Howard Lutnick)氏が、トランプ政権は中国製メモリの調達を支持しないと述べ、その意向をAppleへ直接伝えたと報じられました
iPhoneとMacBookの名前が、はじめて出た
6月の時点では、Appleが政権へ採用の許可を求めているという段階でした。7月にはフィナンシャル・タイムズが、実際にCXMT製DRAMの認定作業に入ったと伝えます。認定というのは、その部品を量産に使ってよいかを社内の基準で確かめる工程のことです。
ただ、そこまではずっと「メモリという部品」の話でした。今回変わったのは、対象が製品の名前で出てきたことです。iPhone、そしてMacBook。手元にある、あるいはこれから買うつもりの、あの2つです。テスト段階なので採用が決まったわけではありませんが、部品カタログの話が急に自分の机の上へ降りてきた感じがあります。
ノートパソコンではHPとAcerが先を行っていて、米国外で販売する機器にはCXMT製メモリをすでに使い始めています。つまり技術的に載らない部品ではない。載せている会社は、もうあります。
しかもこの2社、米政府に許可を求めた形跡が見つかっていません。承認を待っているのはAppleだけ、という格好です。
「中国で売る分だけ」は、どこまで持つのか
ここが、日本で買う側にいちばん近い論点です。Appleは議員に対して、中国製メモリは中国市場向けのデバイスに使うと説明しています。そうすればSamsungやSK Hynix、Micronのメモリを、米国など他の市場で売る製品へ回せる、という理屈です。
これに真っ向から異を唱えているのが、7月末にティム・クック(Tim Cook)CEO宛てで出された上院議員7人の書簡です。書簡は、部品がいったんApple向けの量産認定を通ってしまえば、世界へ広げるのは調達の判断ひとつだと書いています。だから中国向けに限るという線引きは持たない、と。
| 誰が | 何と言っているか |
|---|---|
| Apple(議員への説明) | 中国市場向けのデバイスに使う。そのぶん他社製メモリを、米国などで売る製品へ回せる |
| 上院議員7人(7月末の書簡) | 認定を通れば世界へ広げるのは調達判断ひとつ。中国向けに限るという線引きは持たない |
| 今回の報道 | テスト対象はiPhoneやMacBookを含む製品ライン。売る地域までは書かれていない |
並べると分かりますが、日本で売られるiPhoneやMacに入るのかどうかを、誰もまだ約束していません。Appleの説明どおりなら日本向けは対象外ですし、書簡の見立てどおりなら、その区別はいずれ消えます。今回の報道はテスト対象の製品を挙げただけで、どこで売る分かには触れていません。
書簡は7つの質問を並べていて、Appleへ8月21日までの回答を求めています。中国製メモリを一切使わないと約束するか、テストはどの製品ラインでどのメモリ種別が対象か、CXMT側にどこまでアクセスを許すのか。ひとつでも答えれば、今は欠けている地図の一部が埋まります。
縛られているのは、買うことではなく話すこと
この件をずっと「安いメモリを買えるかどうかの許可待ち」だと思って読んできたのですが、今回いちばん驚いたのはそこではありませんでした。米国の規則が止めているのは購入そのものではなく、技術のやりとりのほうです。しかも技術的な詳細や製品仕様についての会話まで、その禁止の中に入っています。
ウルフ氏の説明が分かりやすくて、Appleは棚に並んでいるCXMTの部品を買って値段を交渉することはできる。けれど「うちのチップに合わせてこう作ってほしい」と発注することはできない。買い物はできるが、注文はできない、という線引きです。
ここがAppleにとって重い理由は、Appleのメモリが普通の既製品ではないからです。自社シリコンといちばん良く噛み合うように専用の構成にしてもらうのが通常のやり方で、その前提でハードウェアの設計が組まれています。既製品で済ませるなら、ハードの一部を作り直すか、性能を理想より落とすところで折り合うか。どちらもコスト削減のために始めた話としては、割に合いません。
書簡の3問目が、まさに同じ場所を突いています。認定作業の過程で、製品の情報や技術仕様、ロードマップをCXMT側と共有したか、これから共有するつもりか。規制する側と報道する側が、別々の入口から同じ一点を見ています。争点は、いくらで買うかではなく、どこまで話したかのほうにあります。
ここで補助線を1本。CXMTから買うこと自体は、実のところ禁じられていません。CXMTが載っているのは、国防総省が中国軍とのつながりを疑う企業を挙げるリストのほうです。しかも2026年2月に一度そこから外れ、6月の更新で戻ったという出入りもありました。一方、米企業の取引そのものを止める商務省のエンティティリストには入っていません。製造も販売も米国外で完結するなら、HPやAcerのように許可を取らずに使えます。
ではなぜAppleだけが承認を待っているのか。米政府に製品を売っているからではないか、というのがAppleInsiderの見立てです。国防総省は、ブラックリストに載る企業の部品を使う会社からは調達できません。買うのは自由でも、買った先で失うものがある。ここでも動きを縛っているのは、規則の条文よりその先の関係のほうです。
【追記】米商務長官が、Appleへ反対を直接伝えた
8月15日(日本時間)、9to5Macは、ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)米商務長官が、中国製メモリを買わないようAppleへ求めたと伝えました。ラトニック氏はヒューストンのApple新製造拠点を視察した後、トランプ政権はその調達を支持しないと述べています。
ここで動いたのは、採用を禁じる新しい規則ではありません。Appleが中国製メモリを実際に採用するかどうかも、どの地域向け製品に使うかも未発表のままです。ただ、政権の反対意向が議会の書簡だけでなく、商務長官からAppleへ直接伝えられた段階になりました。8月21日の回答期限は、部品を試しているかだけでなく、その反対をAppleがどう受け止めるかを見る日になっています。
4社目になるには、安いか多いかが要る
Appleの狙いをSamsung・Micronに対する価格交渉のテコと読む見方が、7月にはよく出ていました。ただ、テコとして使うにも相手に売る力が要ります。CXMTは今年の生産枠をすでに埋めていて、ByteDanceやTencent、Xiaomiといった国内の顧客が先に押さえています。国際的な新規顧客へ回す余裕は、ほとんど残っていないと伝えられています。
値段のほうも、Appleの値下げ要求が断られた8月の報道から流れは変わっていません。CXMTの単価はMicron・SK Hynix・Samsungと同等か、場合によっては上。上院の書簡も独立に、CXMTの価格は世界の競合より高い場合があり、既存顧客への値上げも実施したと書いています。報道と議会文書が別々に同じことを言っている数少ない箇所です。
4社目の供給元が意味を持つのは、売る玉があるか、他より安いかのどちらかを満たすときです。今のCXMTはどちらも満たしていません。だから今回の話を、Apple製品が安くなる材料として読むのは早すぎます。6月にiPhoneを除く製品が値上がりしたのはメモリのコストが理由でしたが、その値札を押し戻す力は、今回の報道のどこからも出てきません。
海外の反応:中国向けに限るという線引きをどう見ているか
今回の報道そのものへの書き込みはまだ少ないので、上院議員の要求や先月のテスト報道など、同じ争点を扱った投稿から拾いました。
I actually think using it for the Chinese market to free up supply elsewhere is a very smart move on Apple’s part.
中国市場向けに使って他の地域の供給を空けるというのは、Appleとしてはかなり賢い動きだと思う。
線引きを歓迎する側この見方が成り立つのは、Appleの説明どおり中国向けで止まった場合です。書簡が疑っているのは、まさにその「止まる」という前提のほうでした。
I think this article mischaracterizes Apple's main reason for approaching Chinese RAM makers - it wasn't to put price pressure on Samsung and Hynix (and Micron), but to simply get enough memory! Another article elsewhere pointed out that those manufacturers have already run out of capacity until 2027!
この記事は、Appleが中国のRAMメーカーへ近づいた主な理由を取り違えていると思う。SamsungやHynix(そしてMicron)に価格の圧力をかけるためではなく、単純に十分な量のメモリを手に入れるためだ。別の記事では、これらのメーカーはすでに2027年まで生産能力を使い切っていると指摘されていた。
安さではなく量が目的という読みこの読みだと、CXMTの値段が高いことは失敗の証拠になりません。ただ生産枠が埋まっている以上、量の側も渡してもらえていないのが今の状態です。
On top of that, CXMT is also in high demand from domestic Chinese giants like Xiaomi, Huawei, Tencent, BYD, etc. They are in a position where they don't need to undercut their prices for anyone, not even Apple.
それに加えて、CXMTはXiaomi、Huawei、Tencent、BYDといった中国国内の大手からも引き合いが強い。誰に対しても値段を下げる必要のない立場にいる。Apple相手であってもだ。
値下げする側にいない買い手として世界でいちばん強いはずのAppleが、この一件では順番を待つ側に回っています。同じスレッドでは、それでもAppleの調達量は他社と桁が違うという反論も出ていました。
Even if Apple were to buy memory chips from China for lower prices, it doesn’t mean that Apple will then lower prices on products that contain those memory chips.
仮にAppleが中国から安くメモリを買えたとしても、そのメモリが入った製品の値段をAppleが下げるとは限らない。
調達が安くなっても値札は別これは中国メモリに限った話ではなく、部品が安くなった分が製品価格へ戻ってきた例をあまり思い出せないという、もっと手前の実感でもあります。
So how much are the scumbags at SK Hynix, Micron, Samsung paying these senators? These greedy companies have made more over the last 12 months than the whole time they’ve been making memory. Absolutely obscene.
SK Hynix、Micron、Samsungのろくでもない連中は、この議員たちにいくら払っているんだ? この強欲な企業は、この12か月で、メモリを作り始めてから今までの全期間より多く稼いでいる。まったくもってあきれる。
議員側への視線裏付けのある話ではありませんが、こう読まれてしまう地合いがあるのは確かです。書簡が守ろうとしているのは国内の生産拠点で、その拠点を持つのが記録的な利益を出している3社でもある、という重なりは残ります。
ひとこと:値段の話だと思って読んでいたら、話していい範囲の話だった
ぼくはこの件を、ずっと値段の話として追っていました。安い調達先が見つかれば製品が安くなる、その許可が下りるかどうか、と。だから今回、規則が禁じているのが「仕様についての会話」だと知って、少し背筋が伸びました。何を買うかではなく、何を話したか。そこが線になっている世界の話だったわけです。
しかも、そこまで気を遣った先にあるCXMTが、安くもなければ売る余裕もない。Appleがそれでもテストを続けているのは、今買うためというより、いつか買えるようにしておくためなのだと思います。企業が数年先の逃げ道を用意する動きを、こうして外から眺められる機会はそう多くありません。
まとめ:8月21日に出るのは、値段の答えではない
確認できているのは、テストの対象にiPhoneとMacBookが含まれること、規則のせいでAppleは既製品しか買えないこと、そのCXMTには売る玉も価格の優位もないこと、そして回答期限が8月21日であることです。
まだ誰も答えていないのは、日本で売られる機種に入るのかという一点です。Appleは中国向けだけだと説明し、議員はその線引きは持たないと書いています。商務長官が反対を伝えたという今回の報道が加わっても、どちらが正しいかは、ここまでの材料では決まりません。
ひとつ確かなのは、8月21日にAppleが何を答えても、それはメモリの値段が下がる話ではないということです。では値段そのものはいつ落ち着くのか。答えは中国側ではなく供給の総量のほうにあって、2027年分はすでに完売し、増産が届くのはその先という状況です。
ではまた!
今回のような「規則が会話を止める」話がなぜ起きるのか、そこへ至るまでの数十年を追った一冊です。CXMTやYMTCの名前が出てくる背景を知っておくと、この先の続報の読み方が変わります。
AmazonSource:MacRumors①、MacRumors②、The Wall Street Journal、Financial Times、9to5Mac、AppleInsider、Chuck Schumer、MacRumors Forums①、MacRumors Forums②、Reddit、MacRumors Forums③、MacRumors Forums④
更新履歴
- 2026年8月15日:米商務長官が中国製メモリの調達に反対し、その意向をAppleへ直接伝えたとの報道を追記
- 2026年8月11日:CXMTのリスト上の位置づけ(エンティティリスト非掲載・2月除外と6月復活)と、Appleだけが承認を待っている理由の見立てを追記
- 2026年8月10日:公開













