となりずむ

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Appleのメモリが初の米国生産へ?SK hynixとIntelが協議、稼働は最短でも2030年

白い背景の上に、分解したiPhoneの部品が横一列に並んでいる。左からディスプレイ、金属フレーム、バッテリー、カメラユニット、ロジックボード、オレンジ色の背面パネルと本体フレーム

✅この記事では、Appleデバイス向けのメモリがアメリカで作られるかもしれないという報道を、その工場の予定表と突き合わせます。

どうも、となりです。

Appleのメモリが、初めてアメリカで作られるかもしれない。そう聞いて最初に浮かぶのは、たぶん値段のほうだと思います。作る場所が増えれば数も増えて、この1年ずっと上がりっぱなしのメモリも少しは落ち着くのではないか。まずそう考えるはずです。

報じたのはロイターで、SK hynixがIntelのオハイオ工場の一部を借りてメモリを作る、という協議が進んでいるという話です。SK hynixはAppleにDRAMもNANDフラッシュも納めている会社なので、まとまればiPhoneやMacの中身にアメリカ製が入ります。

ただ、借りようとしている工場のほうを調べると、話がまるで別の形をしていました。

要点まとめ:米国製メモリの話が、値段の話にならない理由

  • ロイターが日本時間9月16日、SK hynixがIntelと米国内でのメモリ生産を協議していると伝えました。案は2つで、Intelのオハイオ工場の一部を借りる形と、Intelや大手クラウド企業と組んで合弁を作る形です
  • Appleのプロセッサは米国では旧世代しか作れませんが、DRAMとNANDは業界標準の規格品なので同じ制約を受けにくい、というのが9to5Macの見立てです
  • ただしそのオハイオ工場は、Intel自身が2025年2月に建物の完成を2030年、稼働を2030〜2031年へずらしています。2022年の発表では2025年に最初の工場が動く予定でした
  • SK hynixは公式サイトで「決まったことは何もない」と出しており、韓国政府が国家核心技術として審査に入る可能性も残っています
この報道で、今の日本で買うiPhoneやMacの値段が動くことはありません。借り先の建物が建つのが2030年で、装置を入れて動き出すのはさらに先だからです。読むなら、メモリの記事としてではなく関税と通商交渉の記事として読むほうが筋が通ります。

 

ロイターが伝えたのは、2つのやり方

関係者3人から聞き取った、と書かれているので固い話に見えます。ただ中身を読むほど輪郭はぼやけていく。挙がっている案は2つで、ひとつがSK hynixがIntelのオハイオ工場の一部を借りる形。もうひとつが、Intelと大手クラウド企業を巻き込んで合弁を作る形です。クラウド側がここに顔を出すのは、AIサーバー向けのメモリを先に押さえておきたいからです。

関係者のひとりは、話し合いはまだ探りの段階で何も決まっていないと話しています。SK hynix側もそれを否定していません。ロイターへのコメントでは「メモリ事業の競争力を高めるため、生産拠点の追加を含めさまざまな方策を検討している」としつつ、「現段階で決まったことはない」。同じ日のうちにSK hynixは自社サイトへ声明を出し、記事に名前が出た特定の企業との協力についても、米国でのメモリ生産についても、確定したものはないと重ねています。報道の当日に公式が否定を出すのはよくあることですが、ここまで細かく打ち消しているのは少し気になりました。Intelは報道へのコメントを断りつつ、オハイオの用地整備を続けていることだけは認めています。

もうひとつ、地味に大きいのがどの種類のチップを作るのかが分かっていない点です。そこは取れなかった、とロイター自身が書いています。SK hynixの品ぞろえはサーバーやPC、スマートフォンに入るDRAM、長期保存に使うNANDフラッシュ、そしてAI向けのHBM。Appleが使うのは前の2つです。作る中身が決まっていない段階だと知ると、思っていたよりだいぶ手前の話だなと。

そのわりに市場だけは反応が速くて、Intel株は水曜の寄り付きで5.5%高、SK hynixもソウルで4.1%高で終えています。何も決まっていない話で、市場だけがここまで動くんですね。

チップは旧型止まりでも、メモリなら最新でいい

Appleのチップがアメリカで作られている話自体は、もう何年も前からあります。TSMCのアリゾナ工場で、Apple設計のプロセッサが実際に焼かれている。ただ、そこで作れるのは数世代前のものに限られます。最先端の製造技術を台湾の外へ出すことに制限がかかっていて、アリゾナは構造的に一歩後ろを走る形になるからです。TSMCが米国へ2,650億ドルを投じても先端チップは台湾のままという話も、突き詰めるとここに行き着きました。

アリゾナの話を書いたときは、数字がどれだけ大きくても結論が「それでも先端は台湾のまま」に落ちました。今回はそこが違うので、読んでいて素直にうれしい。メモリは、この事情から外れるからです。9to5Macが指摘しているのは、AppleがDRAMもNANDも業界標準の製品をそのまま買っているという点です。iPhoneやMacのプロセッサはApple自身が設計した固有のものですが、その隣に載るメモリはSamsungでもSK hynixでもMicronでも成立する規格品。だから「Appleのためだけの技術を国外へ持ち出す」という構図にならない。

メモリだけが身軽だというのは、言われてみればそのとおりで、設計を自分で握っていないことがここでは有利に出ます。ふだんは自社設計こそが強みとして語られるので、そこが逆向きに働くところに引っかかって、しばらく考えました。

とはいえ、規格品とApple固有の設計を分けるこの線引きがどこまで持つのかは、あとで海外の反応を読んでいるうちに少し怪しくなりました。そして技術を出したくない側は、アメリカだけではありません。

借りる予定の工場は、まだ建っていない

オハイオの工場は、Intelが2022年に発表したときには最大1,000億ドルを投じる巨大計画でした。最初の工場が動き出すのは2025年の予定。ところが2025年2月28日、Intelは自社のニュースルームで、その予定を丸ごと後ろへずらすと発表しています。

下はIntelが示した現在の計画です。オハイオの建設現場は2022年からずっと動いていますが、行き先の日付はこうなっています。

Intelオハイオ工場(2025年2月28日時点の計画) 建設完了 稼働開始
第1棟(Mod 1) 2030年 2030〜2031年
第2棟(Mod 2) 2031年 2032年

Intelはこのとき「生産開始の時期を事業と市場の需要に合わせる」「工事はペースを落として続ける」と説明しています。需要が立てば前倒しできる余地は残す、という書き方でした。それでも会社が自分で置いた数字は2030年で、ここを読んだときに記事のほうを一度読み直しました。

しかも建物ができても、そこはまだ空の箱です。中に入れる露光装置やエッチング装置は数年待ちが当たり前で、メモリの量産ラインとして立ち上げるにはさらに時間が要る。借りれば早い、という読み方はここで消えます。ぼくが最初に期待したのも、まさにこの読み方でした。

比べる相手を置くと、遅さがもう少しはっきりします。SK hynix自身が韓国に建てている新工場は、最初のクリーンルームが開くのが清州で2028年12月、龍仁で2029年6月。メモリ不足がいつまで続くのかを数字で追った回で書いたとおり、2027年分の生産枠はもう売り切れています。借りるほうが早いはずなのに、建てるほうが先に着く。順番が逆です。最初は自分の読み違いかと疑いました。

押しているのは、メモリ不足ではなく関税

では、なぜ2030年の箱の話が今ごろ出てくるのか。ここが分からないままだと落ち着かないので、ロイターの記事を最後まで読みました。そうすると、別の絵が見えてきます。

米商務長官のハワード・ラトニック(Howard Lutnick)氏は、韓国と台湾の企業に対して、アメリカ国内での生産を増やすと確約しなければ最大100%の関税をかけると言っています。韓国は2025年、米国の関税を下げてもらう見返りに3,500億ドルの対米投資を約束しましたが、そのうち1,500億ドルが造船に割り当てられただけで、残る2,000億ドルの行き先はまだ決まっていません。100%というのは、要するに値段を倍にするぞという話です。交渉というより通告に近い書き方だなと思いました。

ここでSK hynixが板挟みになります。情報源2人によると、韓国政府はこの対米投資を交渉のカードとして取っておきたい。一方でワシントンは、早く確約しろと圧力をかけている。そのうえソウルは、SK hynixとSamsungに国内の新しい半導体クラスターを急ぐようにとも言っています。どちらを向いても誰かが待っている。当事者の立場で読むと、これはかなりきついと思います。

 

技術の持ち出しについても、韓国側に止める手段があります。HBMはもちろん、DRAMも国家核心技術に当たると見なされれば、産業技術保護法にもとづく審査の対象になる。韓国の産業通商資源部は、決めるのは企業の裁量だとしつつ、そこに当たる場合は審査が要ると答えています。片方が引っぱって、もう片方が引き止める。両方の手が企業の外にあるので、SK hynix自身が本当はどうしたいのかが気になるのですが、そこはこの記事からは読み取れませんでした。

Intel側にも事情があります。Appleの100%関税免除の裏にあったIntel提携が2026年7月に報じられたときも、動いていたのは技術の選択より政治のほうでした。今回のIntelは米政府が株の一部を持つ会社で、空いている土地を貸せれば資金繰りが楽になります。SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長も2026年7月に、顧客と各国から供給を増やせという強い圧力を受けていると認めたうえで、「アメリカに工場を建てる必要があると思う」と記者団へ話しています。自分から建てたいと言っているようにも、言わされているようにも読めて、ここは迷うところです。

ここまで来ると、協議がまとまるかどうかを技術やコストの話として読むのは無理があります。メモリの記事のつもりで開いたのに、途中から通商交渉の記事になっていて、正直、少し面食らいました。

それでも、この話がAppleにとって意味を持つとしたら

値段の話にならないなら、Appleにとって何の意味があるのか。

ひとつは、作る場所が1か所増えること自体です。メモリの生産は今、韓国と台湾と日本と中国に寄っていて、そこで何かあると世界中のスマートフォンとパソコンが同時に止まります。数年先の保険としてなら意味はある、とぼくは思っています。

もうひとつは、逆向きの話です。ロイターの情報源2人は、アメリカで半導体を作るのは韓国で作るよりずっと高くつくと話しています。人件費も建設費も高いうえ、材料や装置の取引先がアジアに寄っているので、運ぶ費用もかさむ。米国製のメモリができたとしても、それがアジア製より安いものになるわけではない、ということです。

Appleの原価から見ると、ここは気になるところです。iPhone 18 Proの部品代が前の世代より38%上がるという推計では、上がり幅のほとんどがメモリでした。そこへ、より高い調達先の候補が1つ増えるという話でもあります。

安くなる方向の話ではない、というのは先に置いておきたいところです。Apple自身は自分でメモリ工場を建てる気がないと明言していて、やるのは現金を積んで枠を押さえること。供給の心配は減るかもしれないけれど、値札が下がる材料にはなりません。

海外の反応:早いのか遅いのかで、真っ二つ

同じ報道を読んだ人の反応は、賛成か反対かではなく、いつ動き出すのかの見積もりで割れていました。

I don't know the progress of the Intel fabs in Ohio, but if they were going to lease fab space there, this could be online in a year or so

オハイオのIntel工場がどこまで進んでいるかは知らないけど、あそこの工場スペースを借りるつもりなら、1年かそこらで動き出すんじゃないかな

jz0309 / MacRumors Forums(2026年9月17日)

借りるなら早いはず。記事を読んで最初に浮かぶのはこの見方だと思います。建設中の工場を借りるという話の形が、すでに使える設備を借りるように読めてしまう。

I live near the intel site and it’s nowhere near done. I think it’s still got 5 years of construction

Intelの敷地の近くに住んでいるけど、完成にはほど遠い。工事はまだ5年は残っていると思う

justinwebb / MacRumors Forums(2026年9月17日)

近所に住んでいる人の見立て。Intelが出した2030年という数字と、現地で見える工事の残り具合が、だいたい同じところを指しています。

Great, but to be clear, this is half a decade away at best. RAMageddon isn't going to be solved for years. Building a RAM foundry is the bottleneck that the industry is still trying to solve to meet the spike in demand for AI servers. Tooling and construction alone will take 2-3 years, setting up in a country without the Human Resources and expertise will add years to that timeline.

いいことだけど、はっきりさせておくと、よくて5年先の話。RAM不足(RAMageddon)は何年も解決しない。RAMの工場を建てること自体が、AIサーバーの需要急増に応えるために業界がまだ解けずにいるボトルネックなんだ。装置と建設だけで2〜3年、人材も知見もない国で立ち上げるなら、そこへさらに何年も足すことになる

ipedro / MacRumors Forums(2026年9月17日)

装置と人がそろうまでの時間。建物だけでは動かない、という指摘です。メモリ工場の立ち上げがそもそもAI需要に追いつかない理由でもあるので、場所を増やしても解決の速度は変わらない、という読み方になります。

Memory is looking less and less like a commodity every day. We have highly specialized custom built chips, with long-term contracts, being made in collaboration with the hyperscalers.

メモリは日に日に汎用品らしくなくなっている。長期契約のもとで、大手クラウド事業者と一緒に作る、かなり特化した専用チップが出てきているんだから

RealHornblower / Reddit(2026年9月16日)

規格品という前提そのものへの疑い。メモリが業界標準だから技術制限を受けにくい、という話の土台に対する反論になっています。合弁案にクラウド企業が入っている理由とも重なるので、規格品という線引きがどこまで持つのかは見ておきたいところです。

I'm sure there are valid reasons for why Asia has dominated in this type tech manufacturing but it's good to see geographical diversification of what has become important infrastructure. I suspect it will be years in the making and won't do much for shortages and prices in the near term, but in the long-term seeing these things being made in other regions can only be a good thing.

この種のものづくりでアジアが強いのには、それなりの理由があるんだろう。それでも、重要なインフラになったものが地理的に散っていくのを見るのは良いことだ。形になるまで何年もかかるだろうし、当面の品薄や値段にはたいして影響しないと思う。でも長い目で見れば、こういうものが別の地域でも作られるようになるのは良いことでしかない

CalMin / MacRumors Forums(2026年9月17日)

遅くても散らばるほうがいい。当面の値段には響かないと認めたうえで、それでも歓迎する立場です。この記事で書いてきた時間軸の話と、じつは矛盾しません。短期では何も動かず、意味が出るのは長期のほう、という整理です。

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ひとこと:メモリの話だと思って読み始めたのに

正直、最初は素直に期待しました。アメリカで作るなら運ぶ距離は短くなるし、関税の心配も減る。メモリが高いという話をこの1年で何度も書いてきたので、出口らしきものが見えただけで気持ちが動いたんだと思います。

その気持ちがしぼんだのは、Intelのページを開いて2030年という数字を見たときでした。2030年って、今使っているiPhoneが2台くらい入れ替わる先です。そこまで待つ話を、今のメモリ価格の文脈で読んでいた自分がちょっとおかしかった。

で、読み直すと見え方が変わります。これは供給を増やす計画というより、関税をかけるぞと言われている側が、かけられずに済む材料を探している話です。そう読むと、決まっていないことの多さにも納得がいく。まだ交渉の途中なんだから、決まっているわけがない。

ひとつだけ、素直に見てみたい気持ちも残っています。Appleの箱の中に「Made in USA」のメモリが入る日がもし来るなら、そのときの分解写真は見たい。あと4年くらい先の話ですけど。

まとめ:待つ理由にはならない話

整理します。SK hynixがIntelのオハイオ工場を借りて、Apple向けにもなりうるメモリをアメリカで作る。協議そのものは実際に動いていて、ロイターが関係者3人から取っています。ただし2案のどちらを採るかも未定で、作るチップの種類も分かっておらず、SK hynixは公式に何も決まっていないと出しています。

そして、一番大きいのが時期です。借り先のオハイオはIntel自身の計画で建物の完成が2030年、稼働が2030〜2031年。装置を入れて量産へ持っていく時間はそこからさらに要ります。今のメモリ価格が、この協議で動くことはありません。

では何の話なのかというと、関税と通商交渉の話です。米国は韓国と台湾の企業へ最大100%の関税をちらつかせていて、韓国側は3,500億ドルの対米投資の中身をまだ決めきれていない。SK hynixはその真ん中に立たされています。決まるかどうかは工場の都合より、ソウルとワシントンのやり取りのほうで決まりそうです。

ここまで読むと、次に出てくる問いはたぶんこれだと思います。米国生産が間に合わないなら、手元のiPhoneやMacの値段はこの先どう動くのか。そこはAppleのクックCEO自身が「値上げは不可避」と語っていて、その発言のあと実際に何がいくら上がったかをクックCEOの警告とその後の値上げに並べてあります。

ではまた!

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NANDフラッシュを作っている側の製品です。1TBで3万3,280円(10%オフ時点)という値段そのものが、この記事で書いたメモリ高騰の実物でもあります。Mac本体のストレージを増やすより単価は抑えられるので、容量で困っているなら外へ逃がす手はあります。

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