
✅ この記事では、Apple WatchとMac miniから「カーボンニュートラル」表記が外れた背景を整理します。EUの新ルール、各製品の排出量の実態、Apple 2030目標への影響、そして私たちの選び方までをわかりやすく解説します。
- なにが起きた?──表記は消えたが、取り組み自体は継続
- なぜ表記を下げた?──EUの新ルールが「オフセット前提の中立」を不可に
- 実排出はどうなっている?──Watchは8.1kg、年を追うごとに微減
- オフセットは悪なの?──“補助輪”の使い方が問われている
- 日本ユーザー視点:どう選べばいい? 何に注目すべき?
- 背景と今後の見通し──「Apple 2030」は続く、表現はアップデート
- まとめ
どうも、となりです。
Appleは昨年、Apple Watch Series 9を「カーボンニュートラルな製品」と強く打ち出しました。約80%の実排出削減に加え、残りは高品質なカーボンオフセットで相殺する、という筋立てです。続いてM4 Mac miniも“初のカーボンニュートラルMac”とアピール。ところが今季、製品ページやパッケージからその文言が静かに姿を消しました。方針転換? いいえ、中身は続けつつ、言い方を変えたというのが実像なんです。
この記事を読むと、①EU規制がなぜ表記を変えさせたのか、②Appleの実排出(例:Watchの8.1kg)やオフセットの論点、③日本のユーザーが今チェックすべきことがつかめます。
なにが起きた?──表記は消えたが、取り組み自体は継続
9to5macによれば、Apple WatchやMac miniの製品ページから「カーボンニュートラル」の記載が取り除かれました。Appleはなお「Apple 2030」(サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成)をコミットし続けています。つまり、環境方針は維持、マーケ表現だけ変更ということ。
AppleInsiderが補足しているように、箱のラベルやウェブの文言も同様のトーンに刷新され、Watch Series 11 / Ultra 3、M4 Mac miniのページから該当表現が消えました。要点は、「表記は引き下げ、削減努力は継続」です。
なぜ表記を下げた?──EUの新ルールが「オフセット前提の中立」を不可に
鍵はEUの新指令(Directive 2024/825)。2026年9月に施行予定のこのルールは、排出量オフセット(カーボンクレジット)に依存して“カーボンニュートラル”と謳う表示を禁じます。極端に聞こえるかもしれませんが、各社が「中立」の定義をバラバラに解釈して混乱を招いたため、あえて表現自体を封じるという強めの舵切りなんですね。
Appleは来年の法施行を見据えて、世界的に環境マーケティングの言い回しを前倒しで統一。その結果、ウォッチやMac miniから「カーボンニュートラル」の看板が下りた、という流れです。ひとことでまとめると、「規制先取りで言葉を変えた」。
実排出はどうなっている?──Watchは8.1kg、年を追うごとに微減
AppleInsiderは、Apple Watch Series 11のネット排出量が8.1kg、前世代Series 10は8.3kgだったと指摘しています。ほんの少しですが、確実に下げている。再生材の利用、再エネ比率、航空輸送の抑制など、地味だけど効く手を積み上げています。
一方、M4 Mac miniはイベント後に製品ページの文言が改訂されたものの、一部の環境レポートに以前の中立言及が残るなど、資料面では過渡期の揺れも見られます。この辺りは徐々に整えられていくはず。要点は、「数値は改善、表現は慎重に」へ舵を切っていること。
オフセットは悪なの?──“補助輪”の使い方が問われている
ウォッチの初期キャンペーンでは、再エネや素材置き換えで実排出を減らし、残余をオフセットで相殺する設計でした。たとえばパラグアイの植林(ユーカリ)案件のような、回収・吸収をうたうプロジェクトでクレジットを調達するやり方です。
ただ、オフセットには追加性(追加で削減が起きたか)や永続性(吸収が維持されるか)など検証の難しさがつきまといます。そのためEUは、オフセット込みの“中立”表現をマーケに使うのはNGという判断に寄ったわけです。まとめると、「オフセットは使えても、“中立”と言い切る宣伝はダメ」です。
日本ユーザー視点:どう選べばいい? 何に注目すべき?
新しいApple WatchやMac miniを選ぶときに、これからは“文言より中身”を見るのがコツです。具体的には、
- 製品ごとの環境レポート:総GHG(温室効果ガス)排出、再生材比率、再エネ利用、輸送手段の内訳。
- 世代比較:Series 10 → 11で8.3kg→8.1kgに微減、のような年次推移。
- 実排出の削減策:素材の切り替え(アルミ、コバルト、希土類など)、再エネ調達、物流の変更。
ラベルやバッジに頼らず、継続的な“実排出の減り方”を追うのが賢い見方です。企業にとっては派手さが減る一方で、ユーザーにとっては中身が見える時代になります。
背景と今後の見通し──「Apple 2030」は続く、表現はアップデート
Appleは2030年に事業全体でカーボンニュートラルという長期目標を据え、サプライチェーンやデータセンター、製品ライフサイクルの面から削減を進めています。EUの新ルールは、“中立”という言葉の使い方を正す方向。これからは、実排出の開示と検証可能性がより重視されるはずです。
一時的にはマーケの“華”が落ち着くかもしれません。ただ、それは裏を返せば、指標の透明性と比較可能性が上がることにもつながります。投資家もユーザーも、年々どれだけ減らせたかに目を向ける段階に入った、ということですね。
まとめ
AppleがWatchやMac miniから「カーボンニュートラル」表記を外したのは、方針後退ではなく、EU規制に合わせた表現のアップデートです。オフセット依存の“中立”訴求は難しくなりますが、製品の実排出は着実に減少。これからはバッジではなく数値で見るのが健全です。Apple 2030のロードマップは続き、指標の透明性はむしろ高まっていくはず。次の発表では、数字で“前進”を確かめましょう。
ではまた!
Source: 9to5Mac, AppleInsider, WatchGeneration, MacRumors, Fast Company, EU Directive 2024/825
