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Red Magicが採用した“能動液冷”とは何か──Appleのベイパーチャンバーと構造から比較してみる

Red Magicが採用した“能動液冷”

✅ この記事では、Red Magicが発表した世界初のアクティブ液冷システムをもとに、従来のスマートフォン冷却──特にAppleが採用するベイパーチャンバー方式との違いを整理します。

 

どうも、となりです。

ここ数年、発熱との戦いはスマホ設計の大きなテーマでしたよね。 そんななか登場したのが「ポンプで液体を循環させるスマホ」。 一見よく似た“液冷”でも、実はAppleのやり方とはまったく別物なんです。

最新動向:Red Magicが発表した「アクティブ液冷」

内部の流路はレーザーでミクロン単位に加工

中国・深圳で開催された発表会で、Red Magicは「スマホ向けアクティブ液冷システム」を公開しました。 ゲーミングPCやAIサーバーで使われる技術を小型化し、スマホで本格的に応用したかたちです。

これまでの多くのスマホは「ベイパーチャンバー(蒸気室)」と呼ばれる受動的な冷却構造を使っていました。 しかしRed Magicは、内部にセラミック製マイクロポンプを組み込み、冷却液を実際に循環させています。 ポンプが熱を吸収した液体をラジエーターへ送り、さらにファンで空冷──つまり液冷と空冷の“二段構え”なんです。

採用される液体はフッ素系の不凍液で、−40℃から70℃まで安定稼働。 内部の流路はレーザーでミクロン単位に加工され、低温接着や耐パンク膜によって高い密閉性を確保しているそうです。 「数千回の設計修正を経て完成した」とRed Magicは語っています。

性能・仕組み:ベイパーチャンバーとの根本的な違い

まず整理しておきたいのが、「ベイパーチャンバーはパッシブ(受動)冷却」だという点です。 AppleのiPhone 17 Proもそうですが、この仕組みは中空の金属板の中で水分を気化・凝縮させて熱を拡散させるもの。 以前の記事でも紹介したように、内部にポンプはなく、液体は毛細管現象でゆっくりと戻るだけです。

一方でRed Magicの方式はアクティブ(能動)冷却。 小型ポンプで液体を動かし、放熱フィンとファンで温度を積極的に下げるという発想です。 言ってみれば、MacBookのファン冷却と水冷PCの中間くらいの立ち位置。 動作音や故障リスクを抑えながら、より安定した温度を保つ狙いがあります。

この差は“温度を逃がすタイミング”に現れます。 ベイパーチャンバーは熱が広がるのを待つ方式ですが、アクティブ液冷は自ら動いて熱を引きはがす。 結果として、高負荷が続く3DゲームやAI処理でもフレームレートを維持しやすい、というわけです。

「ベイパーチャンバーは“静かに冷ます”、アクティブ液冷は“走って冷ます”。」
 

 

技術背景:マイクロポンプの難しさとスマホ設計への挑戦

スマホにポンプを入れる──言葉で言うほど簡単ではありません。 スペースが限られるうえ、ポンプの振動や音、液漏れリスクなど課題が山ほどあります。 Red Magicはそこで、圧電セラミックを使った超小型ポンプを採用。電圧をかけると振動して流体を送る仕組みで、駆動音はほぼ無音に近いそうです。

また、内部の冷却液には高い耐久性が必要です。 低温でも凍らず、高温でも蒸発しない液体──その条件を満たすのが、AIサーバーやデータセンターで使われるフッ素系の冷却液。 Red Magicはこれを“スマホサイズ”に落とし込むことに成功したとしています。

iPhone 17 Proのようなパッシブ方式との対比で考えると、この挑戦はまさに「スマホ内部をミニPC化」したようなアプローチです。 ただし、ポンプや液路があるぶん構造は複雑で、重量やコスト、耐久性の面では課題も残りそうですね。

市場・日本の視点:Appleが同じ道を選ぶ日は来る?

Appleはこれまで、冷却よりも静音性・信頼性を優先してきました。 分解レポートでも明らかなように、iPhone 17 Proのベイパーチャンバーは極めて薄く、軽さとの両立を意識した設計です。 その思想は「ユーザーに冷却を感じさせない」方向なんですよね。

Red Magicの方式は真逆。 ファンとポンプで冷やす“見せる冷却”です。 このアプローチが主流になるかは未知数ですが、AI処理やクラウドゲームの比重が増すほど、Appleもどこかで能動冷却を検討する可能性はあります。 特にMacBookクラスの熱設計をスマホで再現できるなら、まったく新しい世代のiPhoneが生まれるかもしれません。

まとめ:静かに冷ますApple、動かして冷ますRed Magic

今回の発表をひとことで言うなら、「冷却を再定義したスマホ」です。 ベイパーチャンバーが“受け身で熱を逃がす”のに対し、Red Magicのアクティブ液冷は“攻めて熱を取りにいく”。 同じ「液冷」でも思想が正反対なんですよね。

Appleがすぐにこの方向に行くとは思えませんが、AIやゲーム処理が今の数倍に膨らめば、いつかは“静かなポンプ”を積む日が来るかもしれません。 スマホの中が、いよいよ小さなサーバーになっていく──そんな未来を想像すると、少しワクワクしますね。

ではまた!

 

 

Source: Gizmochina