
✅この記事では、メモリ高騰の責任をめぐってMicronとAppleの言い分がどう食い違っているのか、値上げの背景として整理します。
- 要点まとめ:メモリ高騰の「責任」をめぐる食い違い
- Micronが示した、もう一つの原因
- Appleの言い分は「100年に一度の洪水」
- では、本当に「買い手のせい」なのか
- 海外の反応:どっちもどっち、という冷めた声
- ひとこと:誰のせいか、より、いつ戻るか
- まとめ:値上げの背景にある二つの物語
どうも、となりです。
Appleがほぼ全製品の値上げを発表した、その数時間後のことでした。メモリを供給する側のMicronから、少し引っかかる発言が出ています。
メモリが足りなくて値段が上がっている、というところまでは何度も聞いてきた話です。ただ今回は、その不足を招いたのは誰なのか、という一歩手前に踏み込んでいます。しかもMicronとAppleで、原因の見ているところがずいぶん違う。
どちらかが嘘をついているというより、立っている場所によって見えている景色が違う、という感じです。値上げがこのまま続くのか、それともいつか戻るのかを考えるうえでも、この食い違いは無視できません。
要点まとめ:メモリ高騰の「責任」をめぐる食い違い
- Micronの最高事業責任者が米Wall Street Journalの取材で、2023年に業界の投資が止まった一因として「一部の買い手による執拗な値下げ要求」を挙げました。Appleを名指しはしていませんが、AppleはMicronの主要な取引先です
- この発言は、AppleがMac・iPad・Apple TV・HomePod・Vision Proの値上げを発表した数時間後に出ました。iPhone・Apple Watch・AirPodsは据え置きです
- 一方でAppleのティム・クックCEOは1週間ほど前、値上げは避けられず、原因はAIサーバー向けメモリ需要の急増、いわば「100年に一度の洪水」だと説明していました。原因の見方が真っ向から食い違っています
- 値上げ発表の当日、Apple株は6%下落し、約2,650億ドルの時価総額が消えました。1年あまりで最悪の1日です
Micronが示した、もう一つの原因
発言の主は、Micronで最高事業責任者(CBO)を務めるスミット・サダナ(Sumit Sadana)氏です。米Wall Street Journalの取材に語った内容を、MacRumorsが伝えています。
サダナ氏が振り返ったのは、業界が落ち込んでいた時期の話です。Micronは利益率がマイナスに沈み、増産のための投資ができなかった。その理由の一つに、一部の買い手が値下げをしつこく求めてきたことを挙げました。
We told a couple of the customers who were being very aggressive with pricing at that time that this is not constructive. A lot of the industry investments got shut down in 2023 because of really poor pricing and really poor margins.
当時、価格に非常に強硬だった何社かの顧客には、これは建設的ではないと伝えました。2023年には、あまりにひどい価格とひどい利益率のせいで、業界の投資の多くが止まってしまったのです。
ここで名前は出ていません。ただ、AppleはiPhoneやMac、iPad向けにMicronからDRAMやNANDフラッシュの供給を受けていて、長期の購買契約で有利な条件を引き出すことで知られています。値段に厳しい買い手の代表格として、自然とAppleに視線が集まる、という流れです。
つまりサダナ氏の話を素直に読むと、安く買い叩かれ続けた結果、メーカー側が増産にお金を回せなくなり、それが今の品薄につながった、という筋になります。値上げの一因は、買い手の側の振る舞いにもあるという見方です。
Appleの言い分は「100年に一度の洪水」
では、Apple自身はどう説明していたか。こちらは原因の置き場所がまるで違います。
クックCEOは値上げの1週間ほど前、同じくWall Street Journalに対して、製品の値上げはもう避けられないと語っていました。メモリとストレージのコストにこれだけ圧迫されては、これまでのように顧客を守りきれない、という趣旨です。本人はこの状況を「100年に一度の洪水」と呼び、40年以上この業界を見てきて経験したことがない規模だと表現しています。
そして原因として名指ししたのは、買い手の交渉ではなくAIサーバー向けの広帯域メモリ(HBM)需要の急増でした。AI向けにメモリが大量に吸い込まれていき、消費者向け製品が残り少ない供給を奪い合う形になっている。だから、その需要が落ち着いて値段が下りてくるまでは、Apple製品の価格も下げられない、という説明です。このあたりはクックCEOが「値上げは不可避」と警告した話で詳しく触れています。
2023年の安値を問題にするMicronと、今まさに膨らんでいるAI需要を指すApple。同じ「メモリ高騰」を語っていても、原因として見ている時間も相手も違うわけです。
実際の値上げの中身は、Mac・iPad・Apple TV・HomePod・Vision Proが対象で、iPhone・Apple Watch・AirPodsは据え置きでした。国内の改定幅はMac・iPad・Vision Proの国内値上げでまとめています。市場の反応は厳しく、発表当日にApple株は6%下がり、時価総額にして約2,650億ドルが消えました。1年あまりで最悪の1日です。
では、本当に「買い手のせい」なのか
ここからは確認できた事実から一歩踏み込んだ、私なりの見方です。サダナ氏の言い分には、筋が通っている部分があります。半導体メモリは、もともと好況と不況の波を定期的に繰り返す世界です。値段が落ちている時期に買い手が強く値切るのは自然なことで、それで利益が出なくなれば、メーカーが次の増産に踏み切れなくなるのも分かる話です。
ただ、この説明をそのまま「Appleのせいでメモリが高くなった」とまでは言いにくい、と感じます。理由は二つあります。
一つは、今の高騰を直接押し上げているのが、過去の値切りそのものではなく、AI向けの猛烈な需要だという点です。安く買えた時期の判断と、AIが供給を吸い上げている今の品薄は、地続きではあっても別の力です。クックCEOのHBMの話は、ここを突いています。
もう一つは、Appleの今の振る舞いです。少し前には、AppleがSamsungのメモリ価格100%増を受け入れたと報じられていました。値段に厳しい買い叩き役、というイメージとは裏腹に、確保のためなら倍の値上げも飲む側に回っているわけです。値切りが不足を招いたという話と、今の現実は少しずれて見えます。
結局のところ、責任を一人に背負わせて終わる話ではなさそうです。安値の時代に各社が投資を絞ったことと、そこへAI需要が一気に乗ったことが重なって、今の品薄になっている。Micronもそのうちの一社で、買い手だけが原因というのは話を単純にしすぎだと思います。
買う側として気にしておきたいのは、この見方が当たっているかどうかが、いずれはっきりするという点です。メモリの値段が落ち着いたときにAppleが価格を下げるのか、それとも据え置くのか。そこを見れば、今回の値上げが本当に一時的なものだったのかが分かります。
海外の反応:どっちもどっち、という冷めた声
受け止めは「どちらの言い分も半分は正しい」という冷静なものから、責任論そのものを疑う声まで割れています。
Sure. Nothing to with the AI companies at all. Its been Apple all these years.
ええ、AI企業なんてまったく関係ないんでしょうね。この何年も、ずっとAppleのせいだったわけだ。
皮肉まじりに本命を指す声。原因はAI需要のほうだろう、買い手だけを悪者にするのはおかしい、という見方です。クックCEOの説明に近い立場ともいえます。
Not surprising at all. If you beat the dog long enough eventually it will bite.
まったく驚かない。犬だって長く叩き続ければ、いずれ噛みつくものだ。
Micron側に理を認める声。長く値切られ続けた相手が、ここぞとばかりに言い返してきた、という構図そのものには納得している人もいます。
It's not really a suggestion but rather reality. 2023 was when the pandemic supply finally turned on. The problem was demand dropped and everyone was had inventory. Remember, 1TB SSDs were regularly under $50. Of course guys like Apple would take advantage of that. DRAM and NAND go through a regular boom and bust cycle.
これは示唆というより、ただの現実だよ。2023年はパンデミック対応で増やした供給がようやく出回り始めた頃で、問題は需要が落ちてどこも在庫を抱えていたこと。1TBのSSDが普通に50ドルを切っていたのを覚えてるだろう。Appleみたいな企業がそこに付け込むのは当然だ。DRAMもNANDも、好況と不況の波を定期的に繰り返すんだよ。
どちらも半分正しい、という整理。安い時期に買い手が強気になるのも、その波がいつか逆回転するのも、この業界では織り込み済みだという指摘です。本文で触れた好不況の波と同じ見方です。
Micron clearly addressing an audience that has zero understanding of economics. Ask yourself the question: Who is benefitting the most from capacity constraints right now? Exactly: Micron.
Micronは経済をまるで分かっていない相手に向けて話しているのが見え見えだ。考えてみてほしい。今の供給制約でいちばん得をしているのは誰か。そう、Micronだよ。
責任論そのものを疑う声。品薄でいちばん潤っているのは供給側のMicronなのに、買い手のせいにするのは筋が違う、という冷ややかな指摘です。誰の言い分も、それぞれの立場から出ているという点を思い出させてくれます。
ひとこと:誰のせいか、より、いつ戻るか
責任の押しつけ合いの中身は、正直そこまで気になりませんでした。それより引っかかったのが、当事者の誰一人として「すぐ戻る」とは言っていないことです。Micronは過去の安値を嫌な記憶として語り、Appleは需要が落ちるまで価格は下げられないと予防線を張る。立場は違っても、当面この高値が続くという前提だけは、奇妙に一致しています。
まとめ:値上げの背景にある二つの物語
同じメモリ高騰でも、Micronは「安く買い叩かれた過去」を、Appleは「AIに吸われる今」を原因に挙げています。どちらも一面では正しくて、片方だけを犯人にするのは無理がある、というのが今回見えてきたところです。
買う側として手元に残しておきたいのは、この値上げが一時しのぎなのか、しばらく続く水準なのかという一点です。メモリの値段が落ち着いたあと、Appleが価格を下げるか据え置くか。そこが、二つの物語のどちらに近かったかを教えてくれます。
ではまた!
メモリやストレージの値段が上がるほど、本体の容量を増やす選択肢は割高になっていきます。外に逃がせるデータだけでも移しておくと、次に買い替えるときに容量で背伸びしなくて済みます。USB-CでMacにもiPadにもつながります。
AmazonSource:MacRumors、The Wall Street Journal、MacRumors Forums①、MacRumors Forums②、MacRumors Forums③、MacRumors Forums④