
✅ 「iPhone Fold」でLiquidmetal(リキッドメタル)が本格採用されるかもしれない──そんな話題が出ています。Appleは10年以上前からこの素材に関心を寄せ、ライセンス契約や特許出願を重ねてきました。今回は、その素材の中身と、なぜ折りたたみの“ヒンジ”に向いているのかを見ていきます。
- 要点まとめ
- Liquidmetalってなに?──“金属ガラス”のふるまい
- なぜヒンジに向くの?──軽くて強く、しかも薄く作れる
- AppleとLiquidmetalの長い関係
- iPhone Foldの見通し:素材は“部分採用”が現実的
- 気になるポイント:量産・補修・手触り
- Liquidmetalは“主役”ではなく“要石”
- まとめ:折りたたみ時代の“ちょうどいい金属”
どうも、となりです。
折りたたみ端末のカギは、何と言ってもヒンジですよね。ここが弱いと、画面のシワやガタつき、耐久性の不安につながります。そこで名前が挙がっているのがLiquidmetal。金属なのに“ガラスのよう”とも表現される、ちょっと不思議な素材です。
要点まとめ
- Liquidmetalは「アモルファス(金属ガラス)」合金。結晶構造を持たず、高い強度と弾性、耐食性が特徴。
- 加熱するとプラスチックのように成形しやすい一方、冷却時に結晶化しにくく、性質を保ちやすい。
- Appleは2010年前後からライセンス契約や特許(鋳造・薄板形成・中空成形など)を重ね、実製品ではSIMピンで試験投入した実績あり。
- 最近の噂では、iPhone Foldのヒンジ軸受・ベアリングなどに採用される可能性。軽くて強い=ヒンジにぴったり。
- ただし筐体すべてがLiquidmetalになるわけではない見立て。アルミやチタンとのハイブリッド案も。
Liquidmetalってなに?──“金属ガラス”のふるまい
一般的なアルミや鋳鉄は、原子が規則正しく並ぶ結晶です。いっぽうLiquidmetalは、原子の並びが不規則なアモルファス(非晶質)。この違いが、次の性質を生みます。
- 高い引張強度・弾性:引っ張ってもしなやかに戻る、いわば“バネ感”。
- 耐食性:錆び・変色に強く、見た目が長持ち。
- 成形性:加熱するとガラスや樹脂のように型に流し込みやすい。薄く・精密に作りやすい。
素材バリエーションにはジルコニウム系・チタン系などがあり、軽いのに硬い──という“おいしいところ取り”が期待できます。
なぜヒンジに向くの?──軽くて強く、しかも薄く作れる
折りたたみ機のヒンジは、薄さ・軽さ・耐久性のトレードオフが難所です。ステンレスは硬いけれど重い。アルミは軽いけれど摩耗や変形が気になる。そこで、軽いのに高強度で、薄肉でも粘りがあるLiquidmetalが候補になるわけです。
うまくいけば、ヒンジのガタつきや変形を抑えつつ、持ち重りを増やさない構造に近づけます。噂どおりなら、ヒンジの軸受(ベアリング)やリンク部など“力が集まる小さな部品”でその特性が活かされるはずです。
AppleとLiquidmetalの長い関係

Appleは2010年ごろからLiquidmetal Technologiesとの独占ライセンスで関係を築き、鋳造・薄板・中空成形など数多くの関連特許を出願してきました。実機としては、iPhoneのSIMイジェクトピンでの採用が知られています。これは、製造上の扱いや仕上がりを量産スケールで確かめる“スモールテスト”でもあったはず。
その後もしばらく大きな製品投入は見られませんでしたが、折りたたみの時代が来て再注目──という流れです。ヒンジは“小さく強い金属部品”の集合体なので、Liquidmetalの得意領域と重なります。
iPhone Foldの見通し:素材は“部分採用”が現実的
うわさでは、フレームはアルミ+チタンのハイブリッド案もあり、端末全体をLiquidmetalで作るのは現実的ではないとの見方が優勢です。まずはヒンジ周りでの部分採用から──という順番が自然でしょう。
発売時期の観測やコストのハードル、ヒンジの歩留まりについては、以前まとめた次の記事もあわせて読むと全体像がつかみやすいはずです。
- 発売時期のずれ込み観測:「折りたたみiPhoneの発売は2027年以降に?」
- ヒンジがコスト構造のボトルネックに:「ヒンジが価格を押し上げる理由」
- 先行機の“耐久の教訓”:「Pixel Foldの耐久から学ぶこと」
- 素材ハイブリッド案の整理:「チタン×アルミのフレーム設計はあり得るか」
気になるポイント:量産・補修・手触り
- 量産性:薄肉・精密形状で真価を発揮する一方、鋳造条件の最適化と検査の厳格さが要求されます。まずは限定部位からの投入が無難。
- 補修性:ヒンジはユニット交換前提になりやすい部位。パーツ供給と工賃の現実的ラインが鍵です。
- 手触りと外観:“高級ステンレスに近い見え味”と言われますが、指紋・細かい擦り傷の出方は仕上げと合金次第。ここは実機を見たいところ。
Liquidmetalは“主役”ではなく“要石”
個人的には、Liquidmetalは端末全体の主役というより、体験を支える要石(キーストーン)だと思っています。ヒンジがしっとり動き、初期の感触が長く続く。そこで差が出れば、折りたたみの評価が“ガラッと”変わるはず。まずはヒンジの“静かな革新”に期待したいところです。
まとめ:折りたたみ時代の“ちょうどいい金属”
まとめ:Liquidmetalは、軽さ・強さ・成形性のバランスがよく、折りたたみのヒンジに最適な素材です。 いきなり全面採用ではなく、まずは負荷が集中する小さなパーツから。そこがうまくいけば、折りたたみiPhoneの“毎日の気持ちよさ”が一段上がるかもしれません。
ではまた!
Source: AppleInsider, Ming-Chi Kuo, Patent filings