
✅この記事では、iFixitが公開したiPhoneバッテリーの製造工程の動画について、何が映っていたのかを整理します。
- 要点まとめ:iFixitが見せたバッテリー製造の中身
- 「Apple工場の潜入」ではなく、iFixit自身の交換バッテリーのライン
- 最初の工程は「BMS」──バッテリーは小さな管理基板を持って生まれる
- 思ったより手作業が多い──基板の折りたたみもテープ貼りも人の手
- 検査して、テープを貼って、実機で起動──最後は自分の手で1個組み立て
- 海外の反応:バッテリーが端末に「ひもづく」ことへの賛否
- ひとこと:作る側から見ると、バッテリーの見え方が変わる
- まとめ:バッテリーは、最初から「管理される部品」だった
どうも、となりです。
スマホのバッテリーが、工場でどう作られているのか。気になったことはあっても、実際に中を見る機会はほとんどないと思います。ぼくらが手にするのは、もう完成してiPhoneに収まったあとの、あの黒い板の状態だけです。
その工程を、修理団体のiFixitが動画にして公開しました。ホストのシャフラム・モクタリ(Shahram Mokhtari)氏が中国のバッテリー工場に入り、セルの状態から組み立て、検査までを一通り追いかけて、最後は自分の手で1個を組み上げています。見どころは、精密機器のわりに人の手が入る場面が多いこと。そして映っていたのが「Apple純正の工場」ではなく、iFixit自身が扱う交換用バッテリーのラインだったことです。
要点まとめ:iFixitが見せたバッテリー製造の中身
- iFixitが2026年7月に公開した動画で、iPhone用バッテリーの製造工程を、中国の工場でセルから完成まで追った。ホストのモクタリ氏が自分の手で1個組み立てている。
- 映っているのはApple純正の工場ではなく、iFixitが扱うiPhone 14 Pro互換の交換用バッテリーのライン。「Apple秘密の工場に潜入」という枠とは少し違う。
- 最初の工程は、セルそのものではなくBMS(バッテリー管理システム)への情報の書き込み。バッテリーは、自分を管理する小さな基板を持って生まれる。
- 回路基板の折りたたみやテープ貼りなど、思ったより手作業が多い。自動化された装置と、人の手の工程が混ざり合っている。
「Apple工場の潜入」ではなく、iFixit自身の交換バッテリーのライン
まず、この動画が何を映しているのかをはっきりさせておきたいです。IT之家は「Apple iPhoneのバッテリー生産ライン」という見出しで伝えていますが、正確には少し違います。
iFixitはこのところ中国に足を運んで、何本かの工場取材動画を出しています。今回はそのうちの1本で、バッテリーを組み立てる工程を順に見せるもの。9to5Macも「iFixit自身の交換用iPhoneバッテリーを組み立てている」と伝えていて、iClarifiedも同じ動画を「交換用iPhoneバッテリーの作り方」として紹介しています。映っているバッテリーにも「iFIXIT」のロゴと「Compatible with iPhone 14 Pro(iPhone 14 Pro対応)」の文字、型番のA2865が入っています。

この違いは、地味ですが大事です。「Appleが秘密のサプライチェーンをiFixitに開放した」という話ではなく、iFixitが自分たちの扱う製品のラインを見せている、と考えると筋が通ります。それでも、iPhoneに入るバッテリーがどんな段取りで組み上がるのか、その中身はしっかり見えます。
最初の工程は「BMS」──バッテリーは小さな管理基板を持って生まれる

いちばん意外だったのが、工程の入り口です。最初の関門になるのは、セル(電池本体)そのものではなく、BMS(Battery Management System=バッテリー管理システム)への情報の書き込みでした。作業者がまずBMSに必要な情報を書き込み、それからセルへつなぎます。
BMSは、バッテリーに付く小さな基板です。充放電を見張ったり、今どのくらい劣化しているかといった状態を管理したりする、いわばバッテリーの「頭脳」にあたる部分。iPhoneの設定で見られる「バッテリーの最大容量」の数字も、もとをたどればこうした管理の仕組みが握っています。劣化の中身や付き合い方はiPhoneバッテリーの最大容量を減らさない新常識で詳しく整理しているので、数字が気になる人はあわせてどうぞ。
ここからは、確認できた事実からの受け止めです。工程の最初がBMSだという順番は、バッテリーという部品の性格をよく表していると思います。乾電池のように「ただ電気をためた塊」ではなく、自分の状態を測って報告する小さなコンピュータを、生まれた時点で抱えている。だから交換も、同じ形の電池を差し替えれば終わり、とはいきません。
実際、iPhoneはバッテリーを端末に結びつけていて、純正でない電池や、正しく引き継がれていない電池に替えると「バッテリーの状態を確認できません」といった表示が出ることがあります。ただ、動画に映っている工場でのBMS書き込みが、そのまま特定のiPhoneへの結びつけまで含むのかどうかは、映像だけでは分かりません。工場でのこの書き込みと、手元のiPhoneでの結びつけは、同じ「ペアリング」でひとくくりにしないほうがよさそうです。
思ったより手作業が多い──基板の折りたたみもテープ貼りも人の手

BMSをセルにつないだあとは、回路基板を折りたたんで固定していきます。ここが、動画のいちばんの見どころかもしれません。9to5Macが「意外なほどアナログな工程」と書いた通り、精密機器の部品なのに、人の手で扱う場面がとにかく多いんです。
大きな自動装置がずらりと並ぶ一方で、基板を折る、テープを貼る、位置を合わせるといった細かい作業は、作業台に座った人の手で進みます。品質検査のあとに貼られる粘着テープ(引き出し用のプルタブなど)も、人の手仕事でした。全部がロボット化されているわけではない、というのは、言われてみれば当たり前でも、実際に映像で見るとちょっと新鮮です。

途中には、セルの中身を開いて見せる場面もあります。薄いシートが何層も重なった構造で、この「素のセル」に基板やテープを足していくと、ぼくらの知っているあの黒い板状のバッテリーになります。

検査して、テープを貼って、実機で起動──最後は自分の手で1個組み立て

組み上がったバッテリーは、品質検査にかけられます。クリーンルーム着の作業者が、モニターに出る検査データを見ながらチェックしていく工程です。検査を通り、粘着テープが貼られて、ようやく1個のバッテリーが完成します。
そして最後に、モクタリ氏は組み上げたバッテリーを実際にiPhoneへ取り付けて、電源が入るところまで見せています。工場の中を追ってきた映像が、手元のiPhoneが起動する瞬間で終わる。作る側と使う側が、1本の動画の中でつながる構成になっていて、そこはうまいなと思いました。
海外の反応:バッテリーが端末に「ひもづく」ことへの賛否
動画そのものへの反応はまだ出そろっていないので、ここでは、この動画が触れているバッテリーのペアリング(純正パーツを端末に結びつける仕組み)という、以前から続く論点への声を並べます。
Can’t DIY or goto a third party repair shop, the battery is paired to the device.
自分で交換することも、街の修理店に持ち込むこともできません。バッテリーが端末にペアリングされているからです。
ここが面倒くさい、という声です。バッテリーが端末にひもづくと、自分で替えるのも街の店に頼むのもハードルが上がる。管理基板ありきで作られている部品なんだと分かると、この面倒くささの背景も少し見えてきます。
After paying a shop to repair an iPhone with a generic screen, I believe genuine parts cost more because they are better, not due to artificial scarcity. Not only were the colors off, the battery life was less with the new screen.
非純正の画面でiPhoneを修理してもらったあとの実感として、純正パーツが高いのは、わざと品薄にしているからではなく、単純に品質が良いからだと思います。色味がずれていただけでなく、新しい画面にしたらバッテリーの持ちも悪くなりました。
純正には理由がある、という受け止めです。非純正パーツで痛い目を見た人の実感で、ペアリング批判とはまた別の角度。品質そのものが違うこともある、という指摘は、交換を考えるときに頭の隅へ置いておきたいところです。
A side effect is that you can't reuse parts from a bricked phone in another, which increases waste without actually addressing the problem which is access to spare parts.
副作用として、壊れて動かなくなった端末のパーツを別の端末へ使い回せなくなります。これは、本来の問題である「交換パーツを手に入れられるか」を解決しないまま、廃棄を増やすだけです。
環境の面からの指摘です。ひもづけが進むと、壊れた端末から使える部品を取り出して回すという道が細くなる。修理のしやすさとゴミの量は地続きなんだという視点は、作る工程を見たあとだと、よりリアルに感じます。
ひとこと:作る側から見ると、バッテリーの見え方が変わる
ふだんぼくらは、バッテリーを「減る」か「持つ」かでしか見ていません。でも作る側から見ると、あれは小さな基板を積んで、人の手で折って貼って、検査を通して初めて出てくる部品なんだと分かります。iPhone一台も、そういう部品メーカーの積み重ねでできていて、そこにはiPhoneに欠かせない日本製の部品も数多く入っています。
今回の映像がiFixitの交換バッテリーだった、というのも、ぼくには示唆的でした。修理を訴えてきた団体が、修理パーツの作られ方まで開けて見せる。純正か非純正か、ペアリングは是か非か、という議論のずっと手前に、「そもそもどう作られているか」を知る回路があってもいい。そう思わせてくれる1本でした。
まとめ:バッテリーは、最初から「管理される部品」だった
iFixitの動画には、iPhoneのバッテリーが、セルにBMSという管理基板を組み合わせ、人の手も借りながら1個ずつ仕上げられていく様子が映っていました。しかも今回のラインは、Apple純正の工場ではなく、iFixitが扱う交換用バッテリーのものです。
最初の工程がBMSだったことは、バッテリー交換が乾電池の入れ替えほど単純ではない理由ともつながっています。次にバッテリーの持ちが気になったとき、あの黒い板がどう組み上がっているかを思い出すと、設定に並ぶ「最大容量」の数字も、少し違って見えるかもしれません。
ではまた!
工場の映像を見ると、バッテリーは思ったより手のかかる部品だと分かります。今ある1本を長く使うなら、外で手軽に足せる充電手段があると、深く使い切る回数を減らせます。マグネットで背面に貼るだけのこのタイプは、半固体電池を使った新しめの一台です。
AmazonSource:IT之家、9to5Mac、iFixit(YouTube)、iClarified、Hacker News①、Hacker News②、Hacker News③