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Appleを理解して翻訳する。それが「となりずむ」

Apple特許数11%減の真相。ランキング変位が示すAI時代の「量より質」

キーボードとトラックパッドの領域が点線で示されたノートパソコンの特許図解

✅ この記事では、Appleが2025年の米国特許ランキングで7位に後退した理由を、数字の背景と技術トレンドから読み解きます。
「特許が減った=開発力が落ちた」とは限らない、という話をします。

どうも、となりです。

「Appleが特許ランキングで落ちた」と聞くと、ちょっとざわつきますよね。しかも今回は取得数が前年比11.6%減で、順位も上位から7位へ。数字だけ見ると、勢いが鈍ったようにも見えます。

ただ、元記事(9to5Mac)が紹介しているIFI CLAIMSの年次レポートを読むと、むしろ話の中心は「Appleが落ちた」より、産業全体が“AIへ寄っている”という構造変化でした。ここを押さえると、このニュースの見え方が変わってきます。

注記:IFI CLAIMSとは
IFI CLAIMS(IFI Claims Patent Services)は、米国特許の出願・取得データを集計し、年次レポートなどを公開している特許データ/分析企業です。

この記事で触れている「2025年の米国特許ランキング」や取得件数の数字は、同社の集計に基づくものとして報じられています。
なお、特許の取得数は「いつ審査が進んだか」の影響も受けるため、件数だけで技術力や勢いを断定しないほうが安全です。

要点まとめ:Appleの後退より、AIへ寄る産業地図が本題

  • Apple:2025年の米国特許取得数は2,722件(2024年の3,082件から11.6%減)。ランキングは7位
  • 上位:1位はSamsung Electronics(7,054件/前年比10.6%増)。続いてTSMC、Qualcomm、Huawei、Samsung Display。
  • 米国全体:2025年の出願は393,344件(前年比8.6%減)、付与(取得)は323,272件(0.2%減)。減少傾向は6年連続
  • 国別:米国・日本・中国が上位。成長率は台湾が12%超で目立つ。
  • IBM:11位へ。30年以上維持したトップ10から初めて外れた(「失速」ではなく戦略的に数を追わないという説明が付く)。
  • 技術トレンド:AI投資が中心。ただし“従来型のチップ特許(H01L)”は20%減。一方でH10D(無機半導体デバイス)が急浮上。

2025年の特許活動は「全体で縮む」年だった

IFI CLAIMSの2025年米国特許ランキング上位10社の表。Samsungが1位で7,054件、TSMCが2位で4,194件、Appleは2,722件で6位に位置し前年から減少している

IFI CLAIMSがまとめた「2025年の米国特許付与(grants)数」ランキング上位10社。Samsungが首位を維持し、TSMCやQualcommが続く一方、Appleは2024年の3,082件から2025年は2,722件へ減り、順位も前年より下がったことが示されている

まず前提:ランキングは“相対評価”です

今回のポイントは、Appleだけが落ちたというより、米国の特許活動そのものが出願も付与も伸び悩んだことです。分母が縮むと、企業ごとの上下も起きやすいんですよね。

それでもSamsungとTSMCが強い理由

上位の顔ぶれを見ていると、半導体勢が目立ちます。ここは立ち位置の違いが大きいです。

半導体メーカーは、製造プロセスやデバイス構造の改良が「そのまま特許の塊」になりやすい。一方Appleは、プロダクト体験(ハード+OS+サービス)で勝つ会社なので、特許が分散しやすい面があります。単純な件数比較が難しいのは、この構造のせいです。

日本企業がトップ10に入っている意味

トップ10にはCanonToyotaも入っています。日本の読者目線だと、「特許の強さ=研究開発の土台の厚さ」として実感しやすい部分ですよね。Appleのニュースに見えて、じつは産業全体の“研究開発の体力測定”に近い話でもあります。

AI投資の時代に「特許の主戦場」が動いている

IFI CLAIMSが言う“AI投資が主役”という整理

元記事が引用している通り、IFI CLAIMSは「企業イノベーションの主な物語はAI投資への集中だ」と結論づけています。ここは、Appleの順位よりも重たいメッセージです。

それでもH01Lが減って、H10Dが伸びるのはなぜ?

面白いのはここで、AIが伸びるなら“チップ特許”が伸びそうなのに、従来型のチップ分類(H01L)が20%減とされています。代わりに、H10D(トランジスタやダイオード、集積デバイスなどの無機半導体デバイス)が、取得・出願の両方でトップ20に入ってきた。

これ、たぶん「現行の延長線(微細化や既存アーキテクチャの改良)」だけでは限界が見えてきて、デバイスの前提そのものを変える方向に研究が動いている、というサインなんだと思います。たとえば素材、素子構造、積層、電源、熱、配線、パッケージング……“計算”そのものより、計算を支える土台のほうが主戦場になっていく感じです。

H10Dの主要出願者にTSMCやSamsung、IBM、Intelが挙がっているのも象徴的で、「次の世代の半導体」は、製造・材料・デバイスの強い会社が先に押さえにいく流れが見えます。

注目したいポイント:Appleの「特許が減る」には2つの読み方がある

読み方1:単純に“手数”が減った可能性

もちろん、どんな会社でも人員や予算の配分で出願の勢いは変わります。Appleは領域が広いので、どこかで“出願の棚卸し”をすると件数が落ちることはあり得ます。

読み方2:IBMと同じく「数を追わない」戦略に寄った可能性

元記事の中で印象的なのが、IBMの説明です。トップ10から外れたけれど、それは発明力の低下ではなく、クラウドやAIなど少数の重点領域に集中する意図的な特許戦略だ、と。

Appleも似た動きはあり得ます。とくに今のAppleは、Apple Intelligenceを含むAI体験、プライバシー、オンデバイス処理、独自チップ、空間コンピューティングといった“中核の山”がはっきりしてきていますよね。全部を広く取るより、守りたい山を厚くするフェーズに入っている、と考えると納得しやすいです。

その延長線で見ると、次世代デバイス/次世代チップの話はつながります。たとえばVision Pro周辺の特許や進化の筋は、次の記事をセットで読むとイメージが掴みやすいと思います。
Vision Pro R2と2nm

さらに、次世代モデルの方向性を追うなら、Vision Pro 2の予想進化も合わせておくと「Appleがどこに賭けているのか」が見えやすくなります。

となりずむ的考察

今回のニュース、「Appleの特許が減った」という一点だけを見ると、正直ちょっと不安になりますよね。
でも、ここで一歩引いて考えてみたいんです。これはAppleの勢いそのものが落ちたのか、それとも特許の取り方や技術の流れが同時に変わった結果なのか。
数字をそのまま評価に直結させるのではなく、「Appleはいま何を優先して、どこに力をかけているのか」を線で読む視点が大事だと思います。

ポイント1:Appleが最優先しそうなこと

ぼくがまず押さえておきたいのは、Appleにとって重要なのは「特許の数」そのものではなく、体験やビジネスを守るための権利の置き方だ、という点です。
Appleって、ハードを売って終わりの会社じゃないですよね。OSやチップ、サービスまで含めて一体で価値を作っています。だから特許も、「広く薄く集める」より「守るべきところをしっかり固める」方向に寄りやすいんです。

元記事でも触れられている通り、2025年の大きな流れはAIへの投資集中です。AIは計算性能だけの話ではなくて、データの扱い方、推論の遅れ、消費電力、熱設計まで全部が絡んできます。
この局面で特許件数が減って見えるとしても、優先順位が「量」から「要所の防御」に移っただけ、という読み方は十分成り立つと思います。

ポイント2:過去の似た動きと今回の違い

分かりやすい前例としてよく挙げられるのがIBMですよね。元記事では、IBMがトップ10から外れた理由として、「発明力が落ちたのではなく、狙う分野を絞った意図的な特許戦略」という説明が紹介されています。
この話、Appleにも当てはめたくなる気持ちはよく分かります。

ただ、今回少し違うのは、企業ごとの戦略だけでなく、技術の分類そのものが揺れ始めているところです。
従来型の半導体特許(H01L)が減る一方で、H10D(無機半導体デバイス)が目立ってきたという話は、「今ある技術の延長」から「基盤を作り替える段階」へ空気が動いていることを示しています。

とはいえ、この変化の主役はTSMCやSamsungのような半導体企業です。Appleは同じ土俵で件数を競う立場ではないので、「H10Dが増えた=Appleの次の一手」と短絡的につなげるのは、ちょっと慎重になったほうがよさそうです。

ポイント3:現実的な落としどころ(本命/対抗/注意)

  • 本命シナリオ(確度:中〜高)
    Appleの件数減は、開発力の低下というより、取得タイミングの波と重点領域の選択が重なった結果。
    特許は「いつ通るか」の影響が大きいので、順位だけで企業の力を測るのはやっぱり難しい、という見方が一番自然だと思います。
  • 対抗シナリオ(確度:中)
    重点化というより、出願や継続、名義整理といった運用面の見直しが主因で、2025年はたまたま谷になっただけ。
    来年以降に数字が戻ってくれば、この説明の説得力はかなり増します。
  • 注意シナリオ(確度:低〜中)
    実際には米国での権利化の優先度が下がり、競争領域での防御が薄くなっている可能性。
    「戦略的だから問題ない」と解釈しすぎると、このリスクを見落としやすくなる点には注意したいです。

最終的には、今回の数字を「Appleの調子が落ちた」と見るよりも、AI時代に向けて特許の地図を書き換えている途中と捉えるのが、いちばん無理のない読み方だと思います。
とはいえ、「単なるサイクルの谷だっただけ」という可能性も残るので、これから数ヶ月はどの技術領域の話題が増えてくるかを、落ち着いて見ていきたいところですね。

ひとこと:数字は減っても、狙いが絞れたなら強い

特許ランキングって、わかりやすいからつい“成績表”として見ちゃうんですが、実態はもう少し複雑です。

2025年はそもそも市場全体が縮み、AI投資が中心になり、しかも“従来型の半導体特許”が減る一方で“次世代デバイス”が伸びるという、世代交代の匂いが出ました。そんな年に、Appleの付与数が落ちたとしても、それだけで「弱くなった」とは言い切れないと思うんです。

むしろ、Appleがどこに研究開発の重心を置き、どの領域を厚く守るのか。そこを見たほうが、次の製品や体験の“前振り”として面白い。あなたはこの数字、ネガティブに見えましたか?それとも「方向転換のサイン」に見えましたか?

Redditの反応まとめ:Appleの特許減少をどう見るか

1. Appleの戦略に関する反応:「量より質、あるいは秘匿か」

  • 「衰退ではなく最適化」
    多くのユーザーは、特許数の減少をネガティブには捉えていません。「出願を絞り、意味のあるものだけを残しているだけでは」という見方が主流です。
  • 営業秘密(トレードシークレット)へのシフト
    「特許は公開が前提になる。ならば、あえて権利化せずブラックボックスとして抱え込む判断もあり得る」という指摘が複数見られました。
  • 財務との整合性
    「これだけの利益とキャッシュフローを出している企業が、発明力に困っているとは考えにくい。単に出願の精査を厳しくしているだけだろう」という冷静な分析も支持を集めています。
  • “ゴミ特許”排除論
    「数を稼ぐためだけの無意味な特許なら誰でも出せる。本当に重要なのは質だ」という声は、かなり根強い印象です。

2. IBMのトップ10陥落への反応:「時代の終わり」

  • 戦略転換の先行モデル
    IBMが以前から「数を追わず、AIやクラウドなど特定分野に集中する」と公言していた点が、Appleを読むヒントとして語られています。
  • 皮肉な評価
    「IBMは29年も1位だったが、その間にどれだけ消費者向けの革新的製品を生み出した? 特許数は指標にならない」という辛辣な意見も目立ちました。

3. 半導体・AI勢(Samsung / TSMC)への注目

  • 次世代チップ(H10D)への移行
    従来の半導体特許が減る一方で、無機半導体デバイス(H10D)が急浮上している点に、多くのユーザーが注目しています。
  • 「製造こそが王」論
    「物理的にチップを作るTSMCやSamsungが特許を固めるのは当然。Appleはそれを活用する立場に特化しているだけ」という、役割分担を前提とした見方もありました。

4. 懐疑的な視点:「弁護士の仕事に過ぎない」

  • 訴訟対策としての特許
    「特許部門は、自分たちの存在意義を示すために、実現性の低いアイデアを言葉で膨らませて出願しているだけでは」という、やや冷めた意見も散見されます。
  • ユーザー体験との距離
    「特許ランキングが上がったからといって、次のiPhoneが劇的に良くなるわけではない。ユーザーにとっては最もどうでもいいニュースの一つだ」という声もありました。

全体として、Redditでは「特許数=イノベーション力」と単純に結びつける見方は少なく、
公開か秘匿か、製造か体験かといった視点で、Appleの立ち位置を冷静に捉えようとする議論が多い印象です。

まとめ:特許ランキングは“成績表”というより、技術の体温計

  • Appleは2025年に米国特許取得数が2,722件へ減り、ランキングは7位になった。
  • ただし市場全体も縮小傾向で、企業の上下だけでは語れない。
  • AI投資が中心になりつつ、従来の半導体分類(H01L)が減り、H10Dが伸びるという世代交代の兆しがある。
  • IBMのように「数を追わず重点領域を厚くする」戦略は、Appleにも当てはまる可能性がある。

結局、このニュースの面白さは「Appleが落ちた」よりも、技術の主戦場が静かに移っていることだと思います。体温計の数字が少し変わったとき、原因は“体力低下”だけじゃなく“環境の変化”でも起きる。今回はまさに、そのタイプの変化かもしれませんね。

ではまた!

スティーブ・ジョブズ I(ウォルター・アイザックソン著)

スティーブ・ジョブズ I

  • 作者:ウォルター・アイザックソン
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特許という「公開される数字」をあえて追わず、Appleが何を守ろうとしてきたのか。その原点は、ジョブズが徹底した秘密主義と選択的集中にあります。今回のランキング下落を「衰え」と見るか、「思想の延長」と見るか──その判断材料を得るには、やはりこの一冊に立ち返るのが一番近道だと思います。

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Source: 9to5Mac, IFI CLAIMS