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AppleのUI責任者アラン・ダイ氏がMetaへ移籍 社内は“歓迎ムード”に

Appleのプレゼンテーション映像で、ベージュのジャケットを着たアラン・ダイ氏が室内で話している様子。背後には大きなガラス窓から緑の景色が見え、テーブルの上にはiPhoneやMacのディスプレイなどApple製品が並んでいる

✅この記事では、AppleのUIデザイン責任者だったAlan Dye(アラン・ダイ)氏の退社とMetaへの移籍について整理します。Apple側の人事だけでなく、「Liquid Glass以降のUIデザインはどうなっていくのか?」という視点も一緒に見ていきます。

どうも、となりです。

iOS 26やmacOS 26で導入されたLiquid Glassデザインは、「きれいだけど使いにくい」という声もあって、ここ最近ずっと議論の的でしたよね。その中心にいたのが、Human Interface Design担当VPのAlan Dye氏です。そのDye氏が、年末でAppleを離れてMetaに移る──というニュースが出てきました。

一方で、後任にはAqua時代からAppleのインターフェースを支えてきたStephen Lemay(スティーブ・ルメイ)氏が就くことも明らかになっています。これは単なる人事異動ではなく、「AppleのUIデザインの次の一章」が始まるサインと言ってよさそうです。

今回の要点:Dye氏退社とMeta行き、その中身を整理

まずは、9to5MacとMacRumors、Bloomberg、そしてJohn Gruber氏のDaring Fireballでの解説をもとに、事実関係をざっくり並べます。

  • Alan Dye氏は2015年からAppleのHuman Interface Design担当VPとして、iOS・macOS・watchOS・visionOSなどのUIを統括。
  • 元々は2006年にマーケティング/クリエイティブディレクターとして入社し、2012年にJony Ive氏のUIチームに合流。iOS 7以降のフラットデザインにも深く関与。
  • 直近では、iOS 26 / macOS 26で導入されたLiquid Glassの新UIや、Apple Watch、iPhone X、そしてVision Proのインターフェースを率いたとされています。
  • 今回、Dye氏は2025年12月31日付でAppleを退社し、MetaにChief Design Officerとして参加。
  • Meta側では、新設されるデザインスタジオのトップとして、ハードウェア・ソフトウェア・AI統合のデザイン全般を担当。Reality Labs傘下で、ヘッドセットやメガネ型デバイスの体験づくりを任される見込み。
  • Apple側の後任は、1999年からインターフェースデザインに関わってきたStephen Lemay氏。Tim Cookは「1999年以来、すべての主要なAppleインターフェースに関わってきた」とコメント。
  • 今回の退社は、COO Jeff Williams、CFO Luca Maestri、AI責任者John Giannandrea氏など、ここ数年続いている上層部の世代交代の流れの中にある動きと位置づけられています。
  • Gruber氏によると、Apple社内の関係者は「Lemay氏への交代が本当に実現したのが信じられないくらいうれしい」という反応で、「ほぼ全員がハッピー、むしろ“giddy(浮き立つようにうれしい)”なムードだと伝えています。

つまり、「突然の電撃退社」というよりは、ある程度織り込み済みだった形で、AppleとMetaの思惑がそれぞれに交差したタイミングだった、と見たほうが自然そうです。一方で、その受け止め方は社外以上に社内でのほうが歓迎寄り──というのが、今回のGruber氏のレポートのポイントでもあります。

Alan Dye氏はAppleで何をしてきたのか

次に、「そもそもDye氏ってどんな人だったっけ?」というところを整理しておきます。

  • 広告・パッケージデザインなどのビジュアル寄りのバックグラウンドからAppleに参加。
  • iOS 7のフラットデザイン移行期にUIチームに入り、その後のiOS・macOS・watchOSのビジュアル路線をリード。
  • Jony Ive氏の退任後、2015年からHuman Interface Design全体のトップに。
  • Apple Watchの文字盤・コンプリケーション、iPhone X以降のフルスクリーン時代のUI、そしてVision Proのインターフェースにも深く関わってきたとされています。
  • 直近では、iOS 26 / macOS 26で導入されたLiquid Glassのデザインと、その周辺の各種アプリUIの刷新を指揮。

Liquid Glass自体は、見た目のインパクトもあって「これぞ新世代のApple UI」という評価もある一方で、可読性や操作のわかりやすさを犠牲にしているのではないかという批判もかなり強く出ていました。特に、macOS Tahoe版のLiquid Glassは、読みやすさや挙動の重さが話題になっており、以前まとめたmacOS Tahoe版Liquid Glassの課題でも「きれいだけど使いにくい」という評価が目立っていましたよね。

さらにiOS 26.1では、検索フィールドやボタンの表示方法など、Liquid Glass登場直後の仕様からこっそりとUIを修正・後退させる動きも見られています。細かいアニメーションやメニュー挙動の変化は、以前取り上げたiOS 26.1で進行中のUI微調整にも通じるところがあり、「理想と現実のすり合わせをしている途中」という印象もありました。

Gruber氏はこうした数年を総括して、Dye氏の時代について「ビジュアルの表面を重視しすぎて、インタラクションの細部やクラフトマンシップが軽視されてきた」とかなり辛口に評しています。そのうえで、「Lemay氏への交代は、ここから路線を修正するシグナルだ」という見方を示しているのが今回のトーンです。

 

 

Metaでの役割:ハード・ソフト・AIをまとめるデザイン責任者に

Meta側の話も見ておきます。BloombergやMacRumorsによると、今回の採用でMetaは新しいクリエイティブスタジオを立ち上げ、そこでDye氏をハードウェア・ソフトウェア・AI統合のトップに据えるとのことです。

  • 所属はReality Labsで、QuestシリーズやRay-Banメガネなど、ウェアラブル/XRデバイスのUI全般を担当。
  • スタジオには、従来のインダストリアルデザインチームメタバース系のデザイン/アートチームも統合され、ハードとソフトをまとめて見ていく体制になる。
  • Mark Zuckerberg氏はThreadsで、このスタジオについて「デザインとファッションとテクノロジーを束ね、“インテリジェンス(知能)を新しいデザイン素材として扱う”場にする」とコメント。
  • 大量のAIを前提に、「人を中心にした自然な体験」をどう作るかを軸に、AIグラスや今後のデバイスのUI設計を進めていく方針が語られている。
  • もう1人のキーパーソンとして、AppleのHuman Interface Designチームで10年活動してきたBilly Sorrentino氏もMetaに参加。Dye氏とともにiOS 26のLiquid Glassリデザインに関わっていたメンバーが、そのままMeta側に移る構図になっています。
  • Metaはすでに、Quest VRヘッドセットやRay-Ban/Oakleyと共同開発したAIスマートグラスを販売中で、今後は本格的なARグラスも目指しているとされています。

Metaとしては、「Appleで最新のUIを作ってきたコンビを迎え、AI時代のハードウェア体験を一気に押し進めたい」という狙いがかなりはっきり見える人事ですよね。一方で、「いくらデザイナーが優秀でも、会社のカルチャーやビジネスモデルごと変えられるわけではない」という指摘も多く、Redditでは「Metaがまた大物を獲得したけれど、ユーザー体験が劇的に変わるかは別問題」という冷静な見方も目立ちました。

注目したいポイント:これはAppleにとってプラスかマイナスか

① Liquid Glassと“隠しUI”の路線に、いったん区切りがつくかも

Redditのコメントを眺めると、かなりハッキリした空気があります。

  • 「Liquid Glassは見た目はきれいだけど、毎日使うとつらい」
  • 「通知のボタンが小さすぎて押しづらい」「設定アプリが迷路のようだ」
  • 「よく使う操作がメニューの奥や“…”に隠されていて、クリック/タップ数が増えた」

こうした不満の多くが、「Alan Dyeのデザイン哲学そのものに由来している」と見ているユーザーは少なくありません。「コンテンツを前面に」「美しい余白とガラス感」という思想自体は悪くないものの、その裏で「ユーザーが何をしたいか」より「どう見えるか」を優先しすぎたのではないか、というわけです。

そして今回明らかになったのは、こうしたモヤモヤがユーザー側だけでなく、Appleのデザイナー自身の中にもあったということです。Gruber氏によれば、「Dye氏がいつか交代になることを願いつつも、半ばあきらめていた人が多かった」が、Lemay氏への交代が決まり「社内ではほぼ満場一致で歓迎ムード」になっているとのことでした。

そう考えると、今回の交代は、AppleにとってLiquid Glass路線を一度クールダウンさせるきっかけになる可能性があります。全否定ではなく、「いいところは残しつつ、使いにくい部分は整理する」という方向に舵を切りやすくなるタイミングとも言えそうです。

② Lemay体制のカギは「Aqua時代の感覚」をどこまで取り戻せるか

後任のStephen Lemay氏は、1999年からAppleのインターフェースに関わってきた人物です。Aqua全盛期からの流れを知っている人でもあり、従来の「デザイン=どう見えるか」ではなく「デザイン=どう動くか、どう使われるか」という考え方にも触れてきた世代と言えます。

Redditでも、「Aquaや初期iOSの“分かりやすいUI”を知っている人がトップになるのは心強い」「Liquid Glassを全部やめてほしいとは言わないけれど、可読性と一貫性を戻してほしい」という声が多く見られました。

Gruber氏も、Apple内部の声として「Lemay氏は人柄もよく、クラフトマンシップへのこだわりがとても強い」「これ以上の適任者はいなかった」という評価を紹介しています。その一方で、iPadOSのマルチタスク周りなど、Lemay氏が関わった一部の仕様には「自由度をわざと絞りすぎているのでは」という批判もあったそうで、「決して完璧なヒーローではないけれど、それでも広く尊敬されている」というバランス感も伝わってきます。

個人的には、

  • 検索フィールドやボタンなど、よく触る要素のコントラストと位置を見直す
  • アプリごとにバラつきのあるツールバーやサイドバーのルールを整理する
  • Vision Proのような立体的UIと、従来のフラットUIのバランスをもう一度考え直す

といったあたりで、Lemay体制の色が出てくるのではないかと感じています。特に、Vision Pro周りは以前まとめたVision Proのインターフェース解説からもわかるように、奥行きとガラス感の使い方次第でかなり印象が変わる領域なので、ここをどう仕立て直すかは注目ポイントですね。

③ 「フォーム優先」と「使いやすさ優先」の綱引きが再加速するかも

ここ数年のAppleは、iPhone Airのような極端な薄型デザインや、Liquid Glassでの大胆なビジュアル路線など、どちらかというと「フォーム(見た目/形状)」に振った決断が目立っていました。以前のiPhone Airのデザイン特集でも触れましたが、薄さや美しさと実用性のトレードオフは、今のAppleを語るうえで欠かせないテーマになっています。

そんな中で、「フォーム寄り」と評されることが多かったDye氏が去り、Aqua時代からのベテランであるLemay氏が前面に出てくる──というのは、やはり象徴的です。すぐにUIがガラッと変わるわけではないにせよ、

  • Liquid Glassの“ガラス感”を少し抑えて、情報量と可読性を上げる
  • 隠れているボタンをもう少し表に出す
  • タップ/クリック数を減らす方向で、ワークフローを整理する

といった小さな変化が、iOS 27〜28あたりで積み重なってくるかもしれません。じわじわと「使いやすさ優先」の風向きが戻ってくるのかどうか、この人事はその試金石になりそうです。

 

 

ひとこと:Liquid Glassの次は「優しいUI」の番かもしれない

今回の人事は、Metaにとっては「Apple流のビジュアルデザインを取り込む一手」、Appleにとっては「Liquid Glass時代を一段落させるきっかけ」として、それぞれの物語を動かす出来事に見えます。

特にApple側は、iOS 26で一気に振り切った見た目の路線を、これからどう「暮らしの道具」として整えていくかが問われるフェーズに入っていますよね。ここでLemay氏が、Aquaや初期iOSのような「触ればだいたい分かるUI」の感覚を、現代のデバイスにどう落とし込むのか。Liquid Glassで得た“ガラスの質感”を残しつつ、その上にやさしくて迷いにくいUIを重ねてくれるなら、かなり面白い数年になるんじゃないかなと感じています。

Redditの反応まとめ

  • 「ここ10年のUI悪化の戦犯がいなくなった」「Liquid Glassは見た目は好きだけど、UXが最悪だったのでむしろ朗報」という歓迎ムードがかなり多い。
  • 通知センターのボタンが小さすぎる、設定アプリが分かりにくい、写真アプリの操作が複雑になったなど、具体的な不満が大量に挙がっている。
  • 一方で、「Liquid Glassの見た目自体は気に入っている」「昔のフラットUIよりも今の方が“未来感”がある」という、ビジュアル面での支持も一定数存在。
  • Meta側については、「また大物を獲ったが、プロダクト全体のカオスをどうにかしないと意味がない」「Meta製のハードはどれだけ良くても“Facebook感”が強すぎて買いたくない」という懐疑的な声が多い。
  • Appleの人事全体については、「Cook時代の終盤に向けた世代交代が一気に進んでいる」「デザインより財務とロジスティクスが強くなりすぎたのでは」という、やや不安まじりの見方も目立つ。
  • 「昔はOSをアップデートしてもボタンの位置やルールが大きく変わることは少なかったが、今は毎回“再勉強”させられている」「高齢の家族がFaceTimeのUI変更で混乱している」という、ユーザー負担の増加を心配するコメントも印象的でした。

全体としては、Alan Dye個人よりも、「Liquid Glass以降のUI路線」そのものへの評価や不満が一気に噴き出した形になっている印象です。そこに、「Apple内部でもLemay体制への期待がかなり高い」というGruber氏のレポートが重なり、「社外の不満」と「社内の本音」がようやく同じ方向を向き始めた──そんなタイミングにも見えます。

まとめ:AppleのUIデザインは、ここから再び“道具寄り”に振れるのか

Alan Dye氏のMeta移籍は、見方によっては「Appleのデザインから魂が抜けていく」ようにも感じられますし、別の角度から見ると「ようやくUIを使いやすさの軸で見直すチャンスが来た」とも取れます。

  • Metaは、Dye氏やSorrentino氏を迎えてAI搭載デバイスの見た目と体験をブラッシュアップしていく。
  • Appleは、Lemay氏のもとでLiquid Glass時代のUIをどう“人が使いやすい形”に整えていくかが問われる。
  • ユーザーとしては、数年かけてじわじわ変わるUIの変化を観察しながら、「自分にとって心地いいAppleらしさとは何か」を考えていくタイミングに入った。

個人的には、今回の人事をきっかけに、Appleがもう一度「デザイン=人と道具の関係を整えること」という原点に立ち返ってくれるといいなと思っています。見た目の美しさと、長く付き合える使いやすさ。その両方を追いかけるのは大変ですが、それができたときこそ、「やっぱりAppleのUIは気持ちいい」と胸を張って言える未来が戻ってくるはずです。

あなたは、この人事を“失速のサイン”として見るか、それとも“立て直しの一歩”として見るか。数年後のiOS 28やmacOSの姿を思い浮かべながら、じっくり眺めていきたい変化ですね。

ではまた!

Source: 9to5Mac, MacRumors, Bloomberg, Daring Fireball, Threads, Reddit