となりずむ

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なぜAppleはGoogle Cloudを選んだのか?新AI「AFM 3」全5種を解説

MacBook、iPad、iPhoneが並び、3台とも「メキシコシティで一番大きい公園は?」という質問にBosque de Chapultepecと答えるAIアシスタントの画面を表示している様子

✅この記事では、Appleが第3世代のApple Foundation Models(AFM 3)で用意した全5モデルの中身と、なぜGoogle CloudやNVIDIAまで使うのかを見ていきます。

どうも、となりです。

WWDC26の発表を追いかけていると、AppleのAIまわりが急に「モデルの名前だらけ」になったように感じた人も多いと思います。オンデバイスがどうの、クラウドがどうの、しかも一部はGoogleのサーバーで動く、と聞くと、もう何が何だか、というのが正直なところですよね。

でも分解してみると、第3世代AFMはわりとすっきりした地図になっています。オンデバイス2つ、クラウド3つの計5モデル。それぞれ役割が違っていて、賢さとプライバシーの線引きが、ちゃんと一本につながっています。横で順番にほどいていきます。

要点まとめ:第3世代AFMで何が変わったのか

  • 第3世代AFMは全5モデル。オンデバイス2種(AFM 3 Core / AFM 3 Core Advanced)とサーバー3種(AFM 3 Cloud / ADM 3 Cloud (Image) / AFM 3 Cloud Pro)で構成されます
  • オンデバイス最上位のAFM 3 Core Advancedは200億パラメータの疎(スパース)モデルで、毎回動かすのは1〜4億だけ
  • AFM 3 Core Advancedはネイティブにマルチモーダルで、表現力のある音声や高精度の音声入力(ディクテーション)を担います
  • クラウド最上位のAFM 3 Cloud ProはGoogle CloudのNVIDIA GPUで動く。AppleがPrivate Cloud Computeを他社インフラへ広げた初めての例です
  • 人間評価では英語以外のロケール群でも前世代より好まれました。ただし日本語環境での細かい対応や提供時期は未発表です
200億パラメータのオンデバイスモデルから、Google CloudのNVIDIA GPUで動くクラウドモデルまで。バラバラに見える5つを、Appleが同じプライバシー設計の中へ収めた、というのが第3世代AFMの肝です。
 

 

まず全体像:オンデバイス2つとクラウド3つ

名前が5つも出てくると身構えますが、置き場所で分けると一気に楽になります。手元のiPhoneやMacの中で動くのが2つ、Apple側のサーバー(Private Cloud Compute)で動くのが3つ。それだけです。

オンデバイス側は、標準担当のAFM 3 Core(次世代の30億パラメータの密モデル)と、最上位のAFM 3 Core Advanced。サーバー側は、速度と効率に振った主力のAFM 3 Cloud、画像生成・編集を担う拡散モデルのADM 3 Cloud (Image)(Image Playgroundや高度な写真編集に使われます)、そして一番手強い処理を任されるAFM 3 Cloud Pro。エージェント的なツール操作や複雑な推論など、重い仕事はこのProが受け持ちます。

AppleのAIは、単体アプリというよりSiriや写真、文章作成などOSの各所へ入っていく機能です。Apple Intelligenceの全体像を押さえておくと、この5モデルがどの場面で呼ばれているのか見えやすくなります。簡単な変換や要約は手元のCoreで、込み入った相談はクラウドのProで、と裏側で振り分けられている、というイメージで大丈夫です。

AFM 3 Core Advanced:200億を積んで、動かすのは1〜4億

AFM 3 Core Advancedのアーキテクチャ図。User InputがSparsely-activated LLMを通ってModel Responseに至る流れと、DRAM上の密モデル(青)とNAND上のFFNエキスパート(橙・白)を色分けした構成

「200億パラメータのモデルがiPhoneやMacの中で動く」と聞くと、メモリは足りるの?と引っかかりますよね。ここがCore Advancedの一番おもしろいところです。200億をまるごと積んではいるものの、リクエストごとに実際に動かすのは1〜4億パラメータだけ。必要な部分だけ呼び出す疎(スパース)アーキテクチャを採っています。

仕組みとしては、よく使う本体はメモリ(DRAM)に置きつつ、専門的な処理を受け持つ「エキスパート」はフラッシュメモリ(NAND)に大量に控えさせておく。質問に応じて必要なエキスパートだけを引っ張り出す、という作りです。図の右下に並んだたくさんの四角が、その控えのエキスパートにあたります。これで、メモリをパンクさせずに大きなモデルの賢さを手元で出そう、という狙いです。

30億級のオンデバイスモデルは、Appleがこれまでも力を入れてきた領域です。3BクラスのオンデバイスUIエージェントの話とあわせて見ると、標準のCoreとその上のCore Advancedの距離感がつかみやすいはずです。ただしCore Advancedは「最も有能なAppleシリコン向けに最適化」とだけ語られていて、具体的にどのiPhoneやMacで動くのかは、まだはっきり出ていません。ここは実機の対応条件を待ちたいところです。

表現力ある声と、ぐっと正確になった音声入力

Core Advancedがただ賢いだけでなく、ネイティブにマルチモーダルだ、という点も大きいです。何が変わるかというと、毎日触る音声まわり。読み上げの声に表情が出て、音声入力(ディクテーション)の精度が上がる、という方向です。声でメモを取る人、ながら入力をよく使う人ほど、体感が出てきそうな話です。

表現力のある声と高精度の音声入力は、iOS 27の新しいSiriの声と音声入力でも語られてきたテーマでした。今回その裏側にいるのがCore Advancedだ、と分かった形です。Appleが出した人間評価でも、音声入力は前のシステムより好まれています。

音声の人間評価グラフ。AFM 3 Core Advancedと従来のディクテーションシステムを、総合・大文字小文字・言い淀み処理・レイアウト・意味把握・句読点・文体の各項目で比較した棒グラフ

音声まわりの人間評価。総合で44.7%がAFM 3 Core Advancedを好み、句読点の打ち方では50.2%が新しいディクテーションを支持している

グラフを見ると、多くの項目で「引き分け」が大きな幅を占めているのも分かります。全部が劇的に変わるというより、句読点や言い淀みの拾い方など、地味な細部から良くなっていく、という温度感です。とはいえ、音声入力は一度ストレスを感じると使うのをやめてしまう機能なので、この底上げは意外と大きいと思います。

前世代より好まれた、しかも英語以外でも

テキストの人間評価グラフ。AFM 3 CoreとAFM 3 Cloudが、英語と複数のロケール群で前世代モデルより好まれた割合を、好み・引き分け・前世代支持の3色で示した棒グラフ

新しいモデルと聞いて一番気になるのは、結局「前より良くなったの?」というところだと思います。Appleの人間評価では、AFM 3 CoreもAFM 3 Cloudも、前世代モデルより好まれる結果が出ています。英語だけでなく、英語以外のロケール群(複数言語をまとめたグループ)でも同じ傾向だ、というのがポイントです。

ここで日本ユーザーとして気になるのが、では日本語はどうなのか、という点です。評価には複数のロケール群が含まれてはいるものの、日本語環境での具体的な機能や、日本での提供時期は今回はっきり示されていません。英語以外でも底上げされた、という方向性は心強いのですが、自分の日本語環境でいつ・どこまで体感できるかは、もう一段の発表を待つ必要があります。

学習データの中身も、評価を読むうえで頭に入れておきたいところです。Appleは、公開情報、ライセンス取得したデータ、オープンソース、専用研究、合成データを混ぜて学習させ、ユーザーのデータややり取りは含めていない、と説明しています。Webの書き手が学習からの除外(オプトアウト)を選べる点も合わせて、「賢くするために何でも吸い上げたわけではない」という線は引かれています。

なぜGoogle CloudとNVIDIAなのか、Geminiは入っているのか

ここが今回いちばん誤解されやすいところです。プライバシーで知られるAppleが、なぜ自社サーバーだけにせず、わざわざGoogle CloudのNVIDIA GPUを使うのか。対象は最上位のAFM 3 Cloud Proで、エージェント的なツール操作や複雑な推論といった、一番重い処理を担当します。一番計算力が要る部分だからこそ、外の強力なインフラに乗せた、という流れです。

SiriのためにNVIDIAのGPUやGoogle Cloudへ向かう動きは、SiriがNVIDIA BlackwellやGoogle Cloudへ寄っていく話として、発表前から少しずつ見えていました。今回それが、第3世代AFMの一番上のモデルという形で具体化したわけです。

ただ、「Google Cloudで動く=Geminiが入っている」と読むと、そこは行きすぎです。Appleの説明では、5モデルはGoogleと共同で作り、Geminiの出力を使って磨き込んではいるものの、Geminiそのものを組み込んでいるわけではないとされています。Cloud Proは「Geminiのフロンティアモデルに近い品質」を狙う、という言い方です。共同開発と品質の参照点としてGeminiが出てくるだけで、Apple製品の中でGeminiが直接答えているわけではない、と分けて受け止めるのがよさそうです。

他社のサーバーでも、プライバシーの約束は変わるのか

場所をGoogleに借りるとなると、当然「データは大丈夫なの?」が次に来ます。Appleの答えは、Private Cloud Compute(PCC)の約束を、他社のインフラの上でもそのまま適用する、というものです。他社のサーバーでもPCCの保証は変わらない、というのが今回の新しさです。

具体的には、ハードウェアの暗号的な検証、独立したベンダーによる信頼の起点、情報の隔離といった、Appleシリコン上でやってきたのと同じ仕組みを、Google Cloud上のNVIDIA GPUにも持ち込んでいます。NVIDIA側の「処理中もデータを暗号化する」機能と組み合わせることで、場所を貸しているGoogleはデータの中身に触れない、という設計です。Appleがクラウドでもプライバシーを守ろうとする考え方は、Private Cloud Computeを軸にした安全なAIの組み立て方として積み上げてきたものの延長線にあります。

とはいえ、守る相手が増えれば、検証すべき面も増えます。チップの機能が本当に約束どおり働くのか、独立した検証がどこまで回るのか。仕組みとしては筋が通っていますが、ここは仕様の中身が出そろってから、もう一段見ておきたいポイントです。

海外の反応:Googleとの距離感に目が集まる

海外では、性能そのものより「結局これは何で動いていて、プライバシーはどう守られるのか」へ反応が集まりました。ここではHacker Newsで、Googleとの関係やオンデバイスモデルを直接話題にしている声を拾います。

I would love to learn more about what's actually powering Apple Intelligence now. Are they using flagship Gemini models behind their own prompts? Fine-tuning? Pre-training their own models based on Gemini?

Apple Intelligenceが今、実際に何で動いているのかをもっと知りたい。自分たちのプロンプトの裏でフラッグシップのGeminiモデルを使っているのか? ファインチューニング? それともGeminiをベースに自前のモデルを事前学習しているのか?

bensyverson / Hacker News(2026年6月8日)

「結局これは何で動くのか」という戸惑いが、まず最初に出てきた反応です。手元のCoreなのか、Google Cloud上のCloud Proなのかで、速さもプライバシーの前提も変わるので、ここが見えないと判断しづらいんですよね。

Am I reading this correctly? Their chosen cloud providers run the PCC stack on their hardware, so the compute provider is responsible for ensuring the privacy guarantees? I assume that would add to the potential security surface area.

読み方は合っているだろうか。選んだクラウド事業者が自社のハードウェア上でPCCのスタックを動かす、つまりプライバシーの保証はその計算事業者の責任になる、ということ? だとすると、攻撃されうる面(セキュリティの表面積)が増える気がする。

nsagent / Hacker News(2026年6月8日)

他社のハードでPCCを動かす不安は、正直よく分かります。守る相手が増えるほど、約束が崩れる入口も増えるように見える、という心配です。

Intel and Nvidia are responsible for enforcing their privacy features. The cloud operator (Google in this case) has no access to any data.

プライバシー機能を担保するのはIntelとNVIDIAの責任だ。クラウドの運用者(今回はGoogle)はどのデータにもアクセスできない。

wmf / Hacker News(2026年6月8日)

役割分担で読み解く見方もすぐ返ってきています。鍵を握るのはチップ側の機能で、場所を貸しているGoogleは中身に触れない、という整理です。Appleの説明とも噛み合います。

Reportedly it's running in Google Cloud, but Apple already uses Google Cloud for iCloud

報道ではGoogle Cloud上で動くらしい。でもAppleはiCloudでとっくにGoogle Cloudを使っている。

ezfe / Hacker News(2026年6月9日)

そもそも新しい話ではないという指摘もありました。iCloudの一部はずっと外部のクラウドに乗ってきました。今回はそこにPCCの仕組みを重ねた、という距離感で見ると、急に不安がる話でもなさそうです。

A larger context window would be nice, the apple model on devices now is almost too small to do cool stuff with

もっと大きいコンテキストウィンドウがほしい。いま端末で動くAppleのモデルは、面白いことをやるにはちょっと小さすぎる。

NegativeLatency / Hacker News(2026年6月9日)

素朴な物足りなさも残っています。オンデバイスモデルが賢くなっても、一度に扱える文章量(コンテキスト)が小さいと、できることは頭打ちになります。200億パラメータのCore Advancedがそこをどこまで広げるかは、実際に触ってみないと分からない部分です。

ひとこと:プライバシーの線をどこに引いたか

個人的にいちばん見ていて引き込まれたのは、200億という数字そのものより、Appleが線の引き方を変えなかったことです。手元の小さなモデルから、Google CloudのNVIDIA GPUで動く一番重いモデルまで、全部を同じPrivate Cloud Computeの内側に置こうとしている。場所は外に広げても、約束は広げない、という設計の頑固さが、らしいなと思いました。

まとめ:5モデルを1本の線でつないだ第3世代

第3世代AFMは、オンデバイス2つとクラウド3つという5モデルの構成です。賢さは200億パラメータのCore AdvancedやクラウドのProへ広げつつ、プライバシーの基準は外部インフラの上でも変えない、というのが全体の筋でした。

次に見ておきたいのは2つ。Core Advancedが「どのAppleシリコン」で動くのかという対応条件と、日本語環境でいつ・どこまで体感できるのか、という提供のところです。賢くなった方向は見えたので、あとは自分のiPhoneやMacが、その線の内側に入るかどうかですね。ここが分かってきたら、また追いかけます。

ではまた!

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Source: 9to5Mac / Apple Machine Learning Research